廓を出るまで惣右助「茜、巷じゃ互いに、好きと口にしあって照れたほうが負けっていう遊びが流行ってるらしい。」
茜「そうでありんすか。」
惣右助「そうでありんすか、って…ちぃっと言っててくれねぇか」
茜「嫌でありんす。若旦那はいつも変な手管を使うなと仰りんす。」
惣右助「言ってる。言ってるけどよ、本心からの言葉ならいいだろ。」
茜「咎められんす。」
惣右助「………くそっ、ちっとばかりいいだろう。今この部屋の中には俺と茜以外誰もいないし。」
茜「部屋には他に誰もおりんせんが、部屋のすぐ外には利一郎がおりんす。」
惣右助「会話筒抜けかよ。」
茜「それに、若旦那から聞きとう「いくらでも言ってやるよ。俺はお前を好いている。どうせ、粋じゃないとか言うんだろうけどよ」…」
惣右助「おい、茜。何泣いてんだよ。」
茜「いえ、思ったより嬉しくて…若旦那お慕いしていんす。」
惣右助「…っ。それにしても、あれだな。茜の廓言葉ももう時期聞くことがなくなるんだな。」
茜「ここを出ても暫くは出てしまうかもしれんせん。」
惣右助「それは、それで…」