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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    明治大正日本風パロ飯P。
    最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。

    #飯P
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl
    #空P

    【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/06.もず 遠くで、甲高い声がした。鋭い金属音のような鳴き声……もずだ。
     その名を思い出すまでに、ほんの少し時間がかかった。柿の葉はもうすっかり落ちて、細い枝先に、あの小さな猛禽がとまっているのが見えた。じっと身を膨らませ、風に背を向けている。
     「冬は嫌いだなぁ」
     背後から聞こえた悟空の声は、「嫌い」と言う割にどこか楽しげで、それでもほんの少し、息が上がっていた。
     年末が近付いて、やることはいくらでもあった。流されるようにこの街、この家に腰を落ち着けて、二年になるだろうか。一年も前に書生として家を出て行った悟飯も、今朝は戻ってきている。
     古いこの家は、悟空と二人で暮らすには広すぎて、全く使わない場所も多くあった。それでも、年を越すのに何もかもそのままというわけにはいかない。旅暮らしが長く、あまり実感がなかったが……正月とは、そういうものらしい。
     糊を煮て、障子を一枚一枚貼り替える。貼り替えてみると、一年の間に障子紙が色褪せていたことがよく分かる。悟飯は、囲炉裏の灰を掃除して、新しい炭へと入れ替えている。迷いのない、慣れた手付きだ。
     「ちょっと……休ませてくれ」
     柚子湯の準備をしていると、薪を割っていた悟空の声がした。次いで、縁側に腰掛ける気配。妙に深くため息をついている。
     なんとなく気になって、湯呑みを両手に近くへ寄ってみる。随分と頬が上気して、息が上がっている。人並み以上に体力のあるこの男が、薪割りくらいで……湯呑みを渡す時、指先が触れてぎょっとした。水にでも浸けていたかのように、冷えきっている。
     「手が……」
    「ああ、何だか冷えちまって。外にいたからかな」
     自分の湯呑みを縁側に置いて、両手で悟空の手を包んだ。ひどく冷たいのに、汗ばんでいる。呼吸も無闇と荒い……。
     「お前の手、あったけぇなァ。それに、柚子の匂い……年末って感じだな」
    「ああ……そうか」
     無邪気に笑う悟空に、何も尋ねることができない。ただ、やわらかく握り返された手を、あたためようと擦った。無骨で分厚く、力強かったはずの手だ。それが何故、今、これほど頼りなく感じられるのか……。
     囲炉裏に続いて火鉢を掃除していた悟飯が、自分の湯呑みを持って縁側に出て来る。
     「火鉢に火を入れましたよ」
    「そうか、ならちっと暖まらせてもらおう」
     入れ替わるように悟空が立ち上がり、火鉢へ向かって行く。縁側に腰掛けた悟飯もそれを見送り、静かに庭を見回した。
     もずの鋭い鳴き声が、冬の曇天を切り裂くように響いた。先ほど姿を見かけた柿の木へ目を遣ると、枝先にトカゲが刺されて、乾きかけている。はやにえだ。ただの習性だというのに、今日ばかりはやけに不安を煽られる。
     「……ピッコロさん、どうかしました?」
     はっと気付くと、悟飯が心配そうに顔を覗き込んできていた。なんでもない、と呟いて慌てて立ち上がり、軒下に吊るしていた干し柿に手をのばす。一つ取って手渡すと、嬉しそうに笑った。
     「ありがとう……大体、片付きましたね」
    「今夜は泊まるか?」
    「いいえ。もう少し、先生のところで仕事があるので……でも、年越しには戻りますよ」
     干し柿を齧って笑う横顔は、まるで少年のようだ。寒さに赤くなった頬が、健康的につやめいている。
     部屋の中を振り返ると、悟空は火鉢の側に背を丸めて、何事かを考えている様子だった。悟飯もそれを振り返り、すぐに顔を上げる。
     「なんか、今日のお父さん、ずいぶん疲れてましたね」
    「最近、ずっとそうなんだ。医者へ行けと言ったが、聞かない……悟飯、お前からも言ってくれないか?」
    「ふぅん……。本人が行かないって言ってるなら、大丈夫ですよ。元々、丈夫だし。それとも、一度診てもらわないと、ピッコロさんが不安ですか……?」
     その問いかけに、その通りだと返したかった。だが。
     「……いや。お前がそう言うなら、様子を見る」
     不安など表明できる立場だとは、到底思えない。本人も、息子である悟飯も、「大丈夫だ」と笑っているのに、たまたま居着いただけの者が何を言えようか。
     自分の言葉が、なんとも空虚に感じられた。本心で話していないからだ。悟飯は再び悟空を振り返り、それからおれの手を引いた。
     「炬燵にでも入りましょう。僕、お茶を新しく淹れます」
     悟飯が湯を沸かしに行くのを見送って、炬燵に入る。火鉢のそばにいた悟空も膝をついて二、三歩歩き、炬燵に脚を突っ込んだ。
     「悟飯が来たから、すぐ終わったなァ」
    「……そうだな」
     口の中で答えながら、天板から蜜柑を取って、皮を剥く。悟空に渡すと、素直に受け取った。すぐに悟飯が急須を持って座り、湯呑みに緑茶を注ぐ。
     「お父さん……ピッコロさんに心配かけないようにね、大人なんだから」
    「かけてねェよなぁ」
     明るく笑ったかと思うと、炬燵の中で悟空の脚が伸びてきて、膝に載せられた。無作法な振る舞いに一瞬だけむっとするが、膝の上の足が動く感触に、言いかけた文句が引っ込む。爪先が、膝から太腿へ、ゆっくりと這い上がってくる。遠慮を知らぬ足は袷の上前にまで潜り込み、更に身体へ忍び寄る……。
     「僕、年末にはまた帰ってくるから」
    「なんだ、泊まっていけばいいのに」
     悟飯は笑い、蜜柑に手をのばす。若者の指が実の底に突き入れられ、手元を見もせずに皮を剥く。
     「そうできるなら、そうしてますよ」
     父子が蜜柑を口に放り込む。爪先が下腹部に触れるほど這い上がってきた足の裏が、今度は腿の内側へ滑り降りる。同じ炬燵に、悟飯がいるというのに……身動きできず睨み付けても、悟空は悪戯っぽく笑うだけだった。

     悟飯が帰るのを、門で見送った。あめ色に暮れる冬の夕陽が、悟飯の輪郭を淡く彩っている。
     金属を引っ掻くような鳴き声が、ごく近くから聞こえた。
     「もずですね。はやにえが、どこかにあるかな」
     悟飯があたりを見回す。四ツ目垣の、裂けて飛び出した真竹の繊維に、逆さまになったオケラが突き刺さっている。
     「大きい虫だと、ちょっと気持ち悪いですねぇ」
    「トカゲも刺されていた、さっき」
    「そう……。ピッコロさん、お父さんは何でもないと思いますけど、あなたが心配で落ち着かないなら、僕が病院へ引きずって行きますから言って。ただの加齢だと、思いますけどね」
     悪戯っぽく笑う顔は、父親にそっくりだ。曖昧に頷いて、門を押して出て行く背中を、見えなくなるまで見送っていた。
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    summeralley

    DONE完結済みの、マスター💅と客🍚がバーテンダー🅿️を取り合う連載……ンデちゃん含む全員の番外あるのでぼちぼち載せます。
    これは🅿️がバーテンダーなりたてで、カクテル練習する話。真面目だからバーテンダー修業も頑張ったはず🥹
    【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/サイドカー 元々あまり酒を飲まないから、カクテルというものにこんなにも種類があることに驚いた。ネイルは「覚える必要はない、レシピを確認して作っても構わない」と言うが、よく出るカクテルは嫌でもレシピを覚えてしまう。サイドカーも、そうだ。
     ネイルの店へ立つようになって、四ヶ月経った。あいつは元々、この街へ出てきた時からずっとバーテンダーをやっていたが、おれはまったくの初心者だ。それでも、開店前にあれやこれやと教わって、一通りのことは出来るようになったつもりでいた。実際、これまで客から褒められこそすれ、苦言を呈されたことなどなかった。
     「このサイドカー……なんとなく、味が尖ってる気がする」
     そう言われたのは半月前だ。甘い、苦い、ぬるいなら分かるものの……尖っている? そもそもこの客が、ただの感想を言っているのか、文句のつもりで言っているのか、判別できなかった。なんと答えていいか分からないところに、ネイルが横合いから口を出す。
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