Afternoon Bath Time むかしむかしあるところに、雪の国というその名の通り雪に覆われた国がありました。魔法が盛んなその国は、雪が降り続く冬も魔法の技術で皆楽しく暮らしていましたが── ついにそんな雪の国にも、冬の終わりが訪れました。
これは雪が舞う中、ランガ王子の元へ嫁入りをしたシンデレキ姫が迎えた、春の始まりの日。
◇◇◇◇◇
走るたびに、バシャバシャバシャと水溜りを踏みつけた足音が鳴る。
「シンデレキ、こっち!」
「おう!」
先導する声に応えて走りながら、降り続ける雨で張り付いた前髪を掻き上げた。いつもしているヘアバンドも、結んだおさげにもじっとりと水が染み込んでしまって少し重たい。はぁと息を整えてから、シンデレキは腕に持ったガラスのスケートボードを抱え直して、前を走るランガの背中を追いかけた。
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