気だるさに漂う、休日の昼下がり。
まとめて片づけようと溜めていた予定を終え、やんわりとした飽和感に浸りながら眠気の誘いに乗るか考えていると、携帯端末に何かの通知。
こんな休日に協会からか? それともどうでもいい広告か。ソファに深く沈めていた体を持ち上げて画面を開く。
「え?」
だるさを振り切り今度こそメッセージを見る。遠方の恋人からだったのだ。
内容は完結。今度南部へ出張するので護衛を頼みたい、とのこと。別で正式に協会へ依頼を出すので、それまでに他の依頼を引き受けないで欲しいと。
……要は護衛にかこつけたデートのお誘いだった。
「ふ」
真面目で小生意気な彼らしい誘いに小さく笑ってしまう。
俺達の関係を協会は把握しているだろうから、よほどデカい案件やどうしても断れない依頼じゃない限り俺のシフトは空いたままだろう。依頼の認可が前日になろうと。
それを知ってか知らずか、こうして事前に連絡を寄越すくらい彼がそんなに会いたがっていると思うと笑みも零れるものだ。
会いたい。会えるのが楽しみで仕方ないと思っているのはこちらだけではないのだと伝えてくれる。
彼の活躍は日々追っている。昨夜上がった決闘動画も、それはそれは見事な戦いっぷりだった。
しかし動く彼がそこにいたとして、触れられるのは平たく温度の無い画面だけ。
雑誌の特集も、既に知っている情報が紙っぺらに印刷されているだけ。
そこに生身の彼は無く、夏風のような香りも、温度も、俺を見る深緑の瞳も無い。
それを認識する度に胸が寂しく締め付けられた。彼に逢いたいと。
だからメッセージ一つで歓喜もする。彼に逢えると。
了解の旨と、その後うちに泊りに来るだろうと誘ってソファにずり落ちるように体を倒す。
嗚呼、俺って単純。
逢えるだけで年甲斐も無く浮かれてしまっている。
……ならいっそ、とことん浮かれてしまおうか。
依頼の翌日に休み希望を出すことを決め、端末を胸に置いて体を伸ばす。
胸にあった退屈どこかへ吹き去っていた。