ハンサムはどうあってもハンサムらしい。
例えば、こうやって素っ裸で無防備に寝ていても。
例えば、少しだけよだれの跡があっても。
例えば、黒くてコシのある髪がくちゃくちゃに乱れていても。
切れ長の目元はしっかり閉ざされ、生え揃うまつ毛の意外な長さを教えてくれる。
多少間抜けな姿になっても、むしろ可愛らしさとして彼の魅力をぐっと引き上げるのだから不思議なものだ。
煙草の煙が掛からないように一度口から離して髪を撫でる。
緩やかに付いた寝ぐせすら可愛く思いながら、吸い寄せられるようにこめかみへキスをした。
「……、……」
「ん、起こしたか……」
薄く開く目がぼんやりとこちらを見上げて来る。
おそらく意識は夢の中なのだろう。力の抜けた視線は普段よりずっと幼く、そして可愛らしかった。
気持ちよさげだった眠りの邪魔をしたことを申し訳なく思いつつ、そっと囁く。
「まだ朝まであるから、もう少し寝てなさい」
どうせ外には出られない。なら、穏やかな夢に籠っていたほうが断然いい。
ムルソーは何も言わず、この声が聴こえたのか定かでは無いまま瞼を降ろす。
ああ、いい子だ。
彼のゆったりとした仕草を見ているとこちらも眠気が戻って来た。
灰皿に煙草を押し消しベッドに潜り込む。
ついでに重く太い腕を腰に回して目を閉じた。
この夜が終わるまで。
この温度の中で夢を見るために。