零距離照射アスファルトの向こう、陽炎が揺らめいている。
暑さに喘ぐ人々を素知らぬ顔で見下ろしながら、太陽が勝手気儘に輝いている。
一郎は忌々しげに息を吐いた。
額辺りに両手を当て、庇代わりにしたそれの下から空を睨むが、手の甲を白い光でじりじり射られる。
付けた因縁を簡単に返され、遣る瀬無く舌打ちすると、一郎は腕をダラリと下して公園の木陰に向かった。
ドス、と長椅子に腰を下ろす。その反動でポタポタ、と額から汗が流れ落ちた。
一郎は地面に虚ろな視線を向ける。
すぐ傍の街灯下には干からびた虫達が転がっている。
「お互いしんどいな」
背後にある木々の中から聞こえてくる、今際の際にある蝉の途切れがちの叫び。それに対して一郎は自虐交じりに呟き、少し口角を上げる。
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