一陽来復 寒さは昔から苦手だ。かつて村で冷遇されていた頃を思い出す。
“お前に似合いの役割だ。行ってくれるな?”
“これまでこの村で散々世話してやっただろう、その恩を返す時がきたのだ”
重い思考を振り払いたくて軽く頭を振った。火鉢に手を翳し、左右に玉犬達を侍らせて暖をとる。
「ワフッ」
玉犬が耳をぴくりと動かし、恵に何かを伝えるように鳴いた。
雪見障子から恵が外を見やると、今にも雪の降り出しそうな曇り空を背負ってゆっくりと歩いてくる人がいる。白と赤の髪、白の着物、今の季節にぴったりだと恵が思うその人は裏梅という。生贄の恵を山奥で拾ってくれた神様の部下、らしい。
どうしようかな、お出迎えしたいけどこの暖かい場所から動くのは少しだけ億劫だ。
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