後朝の粥の没版「コラさん。朝メシ、食えそうか」
声を掛けると、布団の下の体がもそ……と動いた。船長室のベッドはこの船で1番良い造りだ。広いし物も良い。190を超える大男が被っても余裕のある大きな掛け布団はおれも当然気に入っている。が、3m近い大男にはまるで丈が足りず、頭まで布団を被れば腿の半ばまでしか隠れていない。膝の裏辺りに薄く手の跡が残っているのを見付けて、そっと目を逸らした。目の毒だ。今は不埒な回想に溺れている場合では無い、やるべきことがある。
「コラさん。……起きられるか?」
もう一度声を掛けると、大きな体がもそもそと起き上がった。何故か頭から布団を被ったままだったので、手を塞いでいるトレイを一旦机の上に置く。布団を剥が───そうとして抵抗に遭った。中で布団の端が押さえつけられている。無言のまま格闘すること数十秒、"ROOM"を展開した瞬間に呻き声が聞こえて布団が放り捨てられた。
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