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    a_touijyo

    @a_touijyo

    糖衣錠と申します。
    シチボ関連の二次創作を書いたりします。

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    a_touijyo

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    かのすけくんお誕生日おめでとう!!
    健全かのエンSSです!!
    ※いろいろねつぞう

    手紙こんなに幸せでいいんだろうか。
    俺はぽやぽやと半分くらい意識を飛ばしながら宙を見つめる。
    初めてできた彼女とのクリスマスを過ごして、年始も一緒に初詣に行き、本日は俺の誕生日。

    ここ数年誰からプレゼントを貰えるわけもなく妹からLINEが来て、また一つ歳をとってしまった……なんて空虚な感情を抱くだけの日だったのに。
    それが、大好きなエンジェルちゃんとデートしてプレゼントを貰って、夜には彼女が用意してくれたケーキを二人で食べて、なんてこんなの幸せすぎるだろ。世の中の浮かれリア充とやらはこんなドバドバ脳内幸福物質の出るイベントを平然とやってるのか?信じられん……

    食後のコーヒーを持ってきてくれたエンジェルちゃんがことり、とカップを机に置く音でふっと意識を戻す。いかんいかん、彼女がせっかく俺のために時間を作って、祝って……その事実だけで顔が緩んで仕方がない。
    本当はもう少し余裕を見せたいのに、エンジェルちゃんは全部許してくれるから、なにもかもだめになる。プライドも恥も、俺の情けないところも全部かわいいって言ってくれるから。

    「かのすけくん変な顔してどうしたの」
    「な、んでもない……あー、コーヒー、どうも」
    顔を押さえてソファでのたうち回る俺を見てくすくす笑うエンジェルちゃんは今日もスーパーかわいい。天使すぎる。ふうふうとマグカップに息を吹きかけた彼女は思い出したように口を開いた。

    「そういえば、年末に同窓会に行ったじゃない。その時に昔埋めたタイムカプセルがあってね」
    エンジェルちゃんが言うには、学生の頃に書いた「未来の自分への手紙」を掘り起こしてみよう!という集まりだったらしい。

    確かにそんな話を確かに年末に聞いていた。同窓会なんて誘われたこともなければ当然行く気もない俺とは違うんだな……と思ったのを覚えている。

    「それで、受け取ってきたのがこれ」
    鞄の中なら少し古くなった紙を取り出してハイかのすけくん!と渡された。えっ、なに。無理やり握らされた手元の紙と彼女の顔を見比べる。
    「お誕生日プレゼントのおまけに、私からのラブレター♡」
    なんちゃって、と笑う彼女に「……見ていい、ってこと?」と恐る恐る確認を取ってから二つ折りにされた簡素な手紙を開いた。

    『拝啓 未来の私へ

    元気にしていますか。
    これを読む頃には、私はもう社会人になっている年齢かと思います。仕事は大変でしょうか?
    辛いこともあるでしょう、誰か側にいてくれる人はいますか。

    私には好きな作家さんがいます。
    未来の私は、アイカワさんのことを今でも覚えていますか?

    すごく暖かくて優しい小説を書く人です。辛いことがあっても、アイカワさんの小説を読むことを楽しみに頑張っています。

    未来の私の側にも、どうかそんなふうに大事に思えるものがあるといいなと思います。いまの私にとっての「アイカワさん」と同じように。

    苦しいことがあっても、大変なことがあっても、きっと未来を諦めないでほしいです。

    偶然訪れた小説サイトで自分の生きる励みになってくれるひとに出会えることもあるんだって。

    未来の私がそんな人と出会えていることを、心より願っています』

    息が、詰まった。
    あんな誰も見ていないと思っていた自己満足のサイトで。俺の書いた小説を励みにして、大事にしてくれている人がいた。そして奇跡みたいな偶然が重なって。俺、その人と付き合ってるんだ。

    じわじわと目が潤むのを堪えて顔を上げれば、顔に手を当てて珍しく照れるエンジェルちゃんがばつの悪そうな顔をしていた。

    「これね、恥ずかしいから見せないでおこうと思ったんだけど。昔の私はコメントも送らなかったし、それでかのすけくんのこと孤独にしちゃってたなって思ったら……ちゃんと昔から見てたよって改めて伝えたくなって」

    エンジェルちゃんは俺が欲しかったものをどこまで与えてくれるのか。
    本当に天使なんじゃないか、ってたまに思う。

    「かのすけくんが思ってるよりずっと昔から。私はかのすけくんのこと好きだったんだよ」
    「エ、エンジェルちゃん、ッ……!」
    「あーもうまた泣くー、うふふ、情けないね、かのすけくん!」
    笑ってぎゅ、と抱き締めてくれる彼女の胸に甘えるように擦り付いた。あったかい。ずっと俺が欲しかった温もり。本当はすぐ側にいたのに気付かなかった、大事な人。
    「結局私は、今も昔もかのすけくんから離れられないみたい」
    愛してるよ、と強引に唇ごと食まれるキスを受け入れてソファにゆっくり押し倒される。去年までは誕生日なんてただの区切りで、どちらかといえば憂鬱だったはずなのに。なんなら去年は彼女の面影に囚われて布団を涙で濡らしていたはずなのに。

    おれ、だめだ、いまこの瞬間だけは。世界で一番幸せになっちゃったかもしれない。

    全部蕩かすような深いキスで霞む視界の中。ぼんやりとそんなことを考え、暖かい感触に包まれるように目を閉じた。
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