深紅に揺れる真実に人の外見などは骨に肉と皮が貼り付いているだけだというのが、俺の知り得る中で最も美しい顔をした皇紀という男の常套句だった。
それは彼自身が今までに、他人から受けた視線や言葉の積み重ねなのだろう。
そして、外見に囚われない皇紀が見るのはその皮と肉の奥にある骨格。それは身体の本質であり、真実だ。
皇紀の目には常にその人間の真実が見えるのだと気付いた時、自らの胸の奥にある欲求がジリジリと燃え始めるのを感じてしまった。
だがウィズダムシンクスはお互いに干渉しないルールだ。もし一度でも知ってしまうと、とことん知りたくなってしまうから。
……身体の隅々を。
……心の全てを。
いつか、ラウンジを訪れたうら若いエージェントに告げた言葉を脳内で反芻しながら、開けたばかりのワインをグラスに注いだ。年代物のそれは、だれも居なくなったラウンジのやや薄暗い照明の下で煌めきながら、深く紅い色を主張していた。
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