炎 隣がどったんばったんうるさい。いわずもがな、るいの部屋だ。ゴキブリでも出たのだろうか。それなら俺の部屋もあぶない。ブラックキャップ、どこにやったっけ。そんなことを考えながら二度寝を楽しんでいると、案の定、ガンガンガンと扉を叩かれた。るいは何故かドアチャイムを押さない。
「グンモーニン、ミスターやました!」
「もー、何事よ」
「ねえ、キャンプファイヤーしたい」
「……はあ?」
俺はひとまず、るいを部屋に招き入れた。ご近所に迷惑をかけるわけにはいかない、と言いつつ、こうやって甘やかしてしまう。
冷蔵庫から麦茶を出して――るいの家には冷蔵庫がない――、コップに注いでやる。氷はまあいいでしょ。冷房の温度を来客用に一度だけ下げて、俺は改めてるいに向き直った。
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