夏の初めの遊戯話譚 「あぁ、そういえば武道、お前確か夏休み明けの九月、学校新聞の担当だったな?」
「え?う、うん」
「お前、もう題材は決まってンの」
「いや、その…、まだ、ですね…」
「だろうな。…じゃあそんなお前に、俺から天啓をやろうか。そうだな、九月は学校の七不思議でも特集したらいい。このクソ暑い時期といい、中坊が書く内容としてもお誂え向きだろ。…ハッ、これ以上ない題材だと思わねェ?」
「う、ン?あの、イザナ、え?…え?」
けたゝましい蝉の声が新聞部の部室にこだましてワンワンと頭を揺さぶっている。
七月の終わり、夏休み前だからか今、新聞部の部室にいるのは部長である高等部のイザナと、平部員である中等部の武道しかいない。それどころか今、この校舎自体にはイザナと武道以外の生徒など存在しないことだろう。
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