荷物を詰め終わったところで、バルトが部屋を訪ねて来た。行くべき場所が出来た。ずいぶん濁した説明に、彼は多くを聞かないまま、仲間と背中を押してくれた。
「遠からん者は腹にも聞け! 食事と睡眠、鍛錬は怠るな。それから……」
互いに予想外だったのだろう。ぽかんと口を開けたアレスに、自分だって冗談くらいは言うのだと、真っ赤な顔が目を伏せる。ようやく追いついた笑い声に、彼もまた笑みを返した。
「また皆で食事をしよう。いつでも帰って来るといい」
「おっしゃー! 将軍の奢りだー!」
高らかな宣告にたじろいだ彼は、よかろう、と渋い顔でうなずく。
持って行けるものはもう、十分だ。両腕いっぱいに抱え、アレスは大股で歩き出す。