両片思いに踏ん切りを付けるカミイブ・
「じゃあ、キスしようよ」
何時ものボヤキみたいに深司が呟いた
「…はぁ……?」
「キスしたらさ、本当の気持ちが分かると思うんだよね」
深司は淡々と説明した。
深司の言った本当の気持ちとは、俺の深司に対する好きは”友達”としてなのかそれとも”恋人”としてなのかということだろう、未だに絡まった糸のような思いは心の中で渦を巻いている。
高校生になった俺達はお互いにそれとなく身を寄せあったり、触れ合ったり時には手を繋いだりした。
その意味を深司は確かめたいんだろう。
「…わかった、しよう。」
中二の時に振られてからずっと隣にいてくれた深司は、俺の中では友達よりももっと特別で大切な存在になっていた。
だからこそ触れたいと思ったし体温を感じたかった、でもその特別は”友達の延長線上”に位置していると感じていた。だから俺は恋人になったら深司と友達じゃいられなくなることが心残りで、こんなにも曖昧な関係を深司が受け入れてくれるばかりに続けさせてしまった。
でも、もう、そんなのは終わりにするべきだ。
「そう…本当にするんだ……」
「あぁ」
深司が垂れた髪を耳にかける。
空いた頬に手を伸ばして指先で触れると確かに上気した体温を感じられた。
「………」
「………」
見つめあったままお互い交わす言葉も無く顔が近づいていく。
口から吐いた息が当たると深司は目を閉じて俺に身を委ねた様だった。
俺も目を閉じた。
「っ…」
「………」
重なったほんの一瞬でも深司の唇は柔らかくて、唇が離れて開いた薄目から覗く潤んだ瞳が俺の鼓動を強く早くした。
「………」
「……………」
もう一度深司の唇を感じたくてキスがしたかった。でもそれより前にするべきことがある。
「深司、………好きだ。」
「っ……!」
本当はもっともっと早くにこうするべきだったんだ、恋人になったら友達じゃいられなくなるなんて事は無くて、キスしても深司はずっと俺の親友なんだ。
「俺と…付き合っ」
「っ…!」
言葉を続けようとした瞬間、深司の黒く大きい瞳から大粒の涙があふれ出た。
「しっ深司?!」
「ふっ…うぅっ……」
声を押し殺してはいるが涙は以前止まらない
「ご、ごめん俺…」
間違えてしまったんだと理解した。深司はこの関係性を終わらせてただの友達に戻りたかったんだ、俺だけが勘違いをしていたんだと。
「しんじっ…ほんと……ごめんな…」
気がついたら俺も涙が溢れていた
「うっ…はぁ……かみお、」
深司の色白な指が俺の目尻を撫でる。
そのまま顔を近づけて深司はすがりつくように俺を優しく抱きしめた。
「っ!?…深司?!」
思わず支えるように手を回した。
「かみおっ……かみお…好き」
「え?」
その言葉にフリーズする、なんで?だって深司は。
「好きっ…かみおぉ…うっ…っふぅ…」
何度も繰り返されるその言葉は飲み込めない。
「すき…?」
「ゔん…すき……」
すき、隙、鋤………………
好き
深司 が 俺 を 好き
深司の背中に回した手に力が籠る
「っ?!」
「俺もっ!俺も深司のことが好きだ!」
力いっぱい抱きしめながら叫んだが気持ちはまだ収まらない。
「サラサラの髪の毛も、色白な肌も、すぐぼやくとこも、本当は優しいってとこも、ずっと傍にいてくれたことも、全部!全部っ!好」
言い終わる前に
「煩い」
「ん”っ?!」
両頬を抑えられ強引に口を塞がれた。
「…っはぁ!」
「……本当、神尾って人の気も知らないでさぁ、本当に嫌になるよなあ……」
赤面しながら至極不機嫌そうな深司はなにやらボヤいている。
可愛い。
「何ニヤついてんの?誰のせいでこんな風になってるかわかってんの?…はぁ~……どうせ神尾のことだから分かってないだろうなぁ…」
「ゴメンって深司~!」
腰に手を回しながら顔を覗き込む
「それが人に謝罪する態度なの?謝るならもっと誠意持ってするべきなんだよなぁ……」
「じゃあさ、どうしたら許してくれるんだよ~」
深司は俺の首に手を回して
「……………ぎゅってしてくれなら許す…」
背けた顔はまだ赤かった
「わかったぜ!」
深司への気持ちを沢山込めて、今度は優しく抱きしめた。
「これで許してくれるか?」
「………やだ」
どうやらまだまだご機嫌は治らないみたいだ。
でもそんな所も、
「好きだせ、深司」
「何?そんなこと言ったら俺が許すとでも思ってんの…?」
さて、どうやったら深司の機嫌が良くなるかと考えていたら。
「まぁ…………俺も…好きだよ…」
「~~っ!深司~~~っ!!」
「ちょっ急に力込めないでよ」
「ごめんごめん!」
深司と俺は親友で、そして恋人だ。
これからはもっと色んな事ができる、なにをしようか、考えただけでも嬉しくて愛おしい気持ちが止まらない。
2人で色んな所にいって色んなことして色んな思い出を作ろう。
きっと深司とならどこまでだって一緒に歩んでいける。