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    白いでかい犬

    オタクです

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    白いでかい犬

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    2016年スカファランワンドロ

    スカファラン① 口ずさみたくなるような、軽快な音楽に合わせて横にスクロールされる画面の中を、デフォルメされたトランスフォーマーが走っていく。どこかで見た事があるような機体は、向かって来る敵機をジャンプでかわし、さらに進もうとしたところを画面の右端から飛んできた弾にぶつかって爆発のエフェクトと共に消えた。
     (そろそろ悔しがるか?)
     と期待したが、端末を操作していたスカイファイアーは「あっ」と一言だけ漏らし、あとは静かに「GAME OVER」と表示された画面を切り替えていく。
     「惜しかったな」
     後ろから声をかけると、白い機体が大げさなくらいに跳ねた。
     「ランボル! いつからそこに?」
     「二回前のコンテニューから」
     「随分だな」
     「最初に比べると上達したな」
     「ありがとう。君がいない間にもう少し進められると思ったんだが」
     ゲームに集中していたのが恥ずかしいのか、スカイファイアーがふにゃりとはにかむ。俺としては熱中してもらえるほうが好都合だ。
     「それで、ホイルジャックの用は何だったんだい?」
     彼が振り向いて、数分ぶりに向かい合う。ふふ、と笑いが零れた。
     「これだよ」
     ジャーン! と効果音を付けたい勢いで差し出した掌には、先ほどのゲームと同じタイプのデフォルメを施された赤い装甲のカウンタック(つまり俺)がのっている。
     「ホイルジャックが造ってくれたんだ!」
     「これは……君、だね。すごい。良く出来ているよ。随分可愛らしいけれど、うん。よく似ている」
     すごい。と何度も呟くスカイファイアーに見せつけるように胸をはる。
     「トランスフォームも出来るぞ」
     手動でロボットモードに変形させると、スカイファイアーは子供が憧れのヒーローを見つめるようなきらきらした熱い眼差しを掌の上に降らせてくる。
     すっかり夢中になっているスカイファイアーに、俺はとっておきの仕掛けを教えてやる。
     「でな、このおもちゃなんだけど、実はそのゲームと連動していて、ここのコードを読み取るとゲームの中で俺の機体を操作できるようになるんだ」
     「君を?」
     「ああ、まずは俺だけだけど、他にも何機か希望者がいたからこれからどんどん増えていくと思うぜ」
     宇宙空間を模した世界を駆けていく自分を想像してワクワクする。さっそく連動機能を試そうとスカイファイアーの端末を掴んだが、それより強い力で引き戻される。
     「貸してくれよ? 早くやってみようぜ」
     「出来ない」
     「は? 何で」
     「君の機体を操作してゲームを楽しめる。というのはすごく魅力的だけれど、私はまだこのゲームをクリアしていないんだ。きっとまた何度もゲームオーバーになってしまう」
     「他の機体ならいいのかよ」
     「誰なら平気。という訳ではないけれど、ランボルは嫌だ」
     スカイファイアーが視線を逸らしてミニサイズの俺をつつく。
     「かわいい」
     情けない声が届く。
     「お前って、頭はいいのにバカだよな」
     たかがゲームの世界の話なのに、それでも俺が傷つくのが嫌だなんて。……優しいのだろう。
     「もっと上達したら、いや。もっと強くなって、迎えにいく」
     「き、期待してる」
     ちょっとカッコイイ、と思ってしまったのは惚れた弱みなので内緒だ。
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