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    Dorosumi

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    Dorosumi

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    女装して秘書してる蘆屋さんと受付嬢のぐだちゃんの恋
    その内書けるんだろうか?

    秘書蘆屋×受付立香 受付嬢の立香には憧れの人がいる。
     毎朝早い時間出社している秘書課の女性……誰よりも高いスラリとした背に優しげな笑みをいつも浮かべている人だ。
     本当ならこんなに早く来なくてもいいのに、接点の無い立香には朝の出社と夜の退社時にしか見ることが出来ないのでそうしている。

    「おはようございます!」
    「えぇ、おはようございます」

     名前は知らない、名字だけなら"あしや"ではないかとそう確証も無いことを知るだけ。
     今日も立香は去っていく後ろ姿を見る。
     ふと、あの人が足を止めてこちらに歩いてきた。それだけで心臓の音が大きくなっていく。

    「申し訳ありませぬがランチにオススメの場所はありませぬか……?」
    「えっ」
    「最近なんだかまんねりと申しますか……ともかく誰か知らぬ方のオススメをば聞いてみようと思った次第でございます」
    「あ……と、待ってくださいね」

     立香は頭の中を引っくり返すような勢いで様々なことを考える、昨日のラーメンは美味しかっただとかこの前行った蕎麦屋の天丼がまた食べたいだとか。
     けれど自分が思う美味しいはこの人に似合わない。

    「なんでも宜しいのですよ」

     彼女の黒い瞳が立香を優しく見る。

    「……天丼」

     思わずぽろりと溢したこの一言で立香と秘書の週一ランチ会が始まった。
    おしゃれとはかけ離れていてリーズナブルで美味しいものを立香が見つけ、蘆谷がお礼に小さなお菓子や飲み物をプレゼントする。
     そんなくだけたランチ会がまさかこんなことになろうとは……


          ◆◇◆◇◆
          ◆◇◆◇◆



     蘆屋が喫茶店に行くのは月に二~三度だ。
     行ったらココアを頼んで、お客様ノートに返信を書く……それが最近の細やかな、けれど大切な楽しみだった。

     これを書いた人はどんな人だろうか?

     当然の疑問を持っても店に張り付いて確かめるわけにもいかない。
     だからこれはこのノートの上だけ、これ以上は駄目だと蘆屋は自分に言い聞かせる。

     その日はテスト明けのお昼だった。
     午前中で終わってしまった学校、帰っても親はいない。
     いつもならコンビニで弁当を買ってすませるのだが、なんとなくあの喫茶店で昼食を食べてみようかと学校から出て足を向けた。

     店についてノートを探すが見当たらず辺りを見回せば、4人席に座った他校の女子がそのノートに何やら書き込んでいる。
     胸がざわつく、蘆屋の胸にもしやという期待が湧いた。

     面に出さないように近くのカウンター席に座り、会話に聞き耳を立てる。

    「返事きてたの?」
    「うん!」

     背後から聞こえるその会話にああやはりと口元が綻ぶ。
     席にいた2人の女子を思い出す、黒い長い髪の者と朱色の髪の者がいたがどちらの方だろうか?
     蘆屋がそう考えている間も2人の会話は続いていた。

    「きっとお淑やかで静かな子でね……」
    「はいはい、立香の憧れの女の子は可愛いわよねー」

     彼女の言葉に一瞬心臓が凍るかと思った。
     そう、あのノートの相手はやはり自分を女子だと思っていたのだ。

     しばらくして店を後にする2人を盗み見ながら見送る。
     ノートの相手はどうやら朱色の髪の方――立香という者のようだった。

     元の場所に戻されたノートを開く。
     いつもの可愛いらしい文字で返事が書かれていた。

     それを眺めながら蘆屋は思い返す。
     自分とは全く違う明るい笑顔。
     楽しそうに知りもしない自分のことを語る彼女。

     ギュっと胸の中を掴まれたような感じがした。
     自分が女性だったらこの人は会ってくれるだろうか?

    〝いつか一緒にご飯でも食べたいね〟
    〝ええ、ぜひとも〟

     会うわけにはいかないと思いながら蘆屋は自分の願いを書いて戻した。


          ◆◇◆◇◆
          ◆◇◆◇◆


    「蘆谷さん?」

     覆い被さる"男"に立香は体をこわばらせる。

    「ンンン、女性は自分のベッドでするのを好むと聞いたことがあるのでずっと我慢しておったのです」

     先ほどまで確かに優しかった"女"だったはずの蘆谷は自分の性別を偽るのをやめ、その本性を剥き出す。

    「えぇ、まあ、儂は相手の領分で挑む方が好ましいので……ンフフ、えぇ、えぇ、二人で楽しみましょう」

    舌なめずりをして見下ろす小さな体躯はずっと欲しかったモノだった。


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