夜半、誰もが寝静まっている時間。長屋は静まり返り、誰もが眠りに就いている。同じように寝ていた一年ろ組の鶴町伏木蔵は天井裏に気配を感じ取り、ぱちりと目を開いた。
「やあ」
伏木蔵の部屋の天井板が一つ開き、そこから曲者がにゅっと顔を出す。
「伏木蔵くん、今いいかな」
「もちろんです。密会なんてスリル〜」
昆奈門と伏木蔵は寝ている怪士丸を起こさないよう、静かに学園裏手の山に向かった。手頃な木を見つけ、胡座をかいた昆奈門の膝に伏木蔵が収まる。
「こなもんさん、大人のお話は終わりましたか〜?」
「......ああ、うん。終わったよ」
「それはなによりです〜」
この子は時折、大人よりも鋭い観察眼を発揮する。今回は昆奈門の任務を深堀りこそしなかったものの、見かける度にお辞儀をしたりひらひらと手を振ってくれている。全く律儀な子だ。
1940