_____触れてみたい、そうふと思ってしまった。
そう思った時には、文次郎の手は留三郎の頬に向かい、触れていた。
※
裏裏山で鍛錬中、いつもの様に犬猿の仲まさにという様に喧嘩をしていただはずだったのだ。
ひとしきり喧嘩をし拳をぶつけ合った後、ふと留三郎に触れたいとそう思った。
なぜ?と思うよりも先に、既に伸ばされた手のひらは留三郎の頬に触れていた。
触れた後一瞬震えた頬を包む様に触れた己の手の指先は熱さを、手のひらからは相手の頬が存外やわいことを滑らかであることを感じ取る。
そして、そのまま手のひらで頬の下を顎から首までなぞる様に触れてみたが頸動脈からの鼓動を感じる。当たり前だが、生きている。留三郎の生命を感じる。
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