「あれは意外にも、楽しめたものだったな」
5年前、ゼクノヴァで行方不明になりながらも無事に生還したシャア・アズナブルはそう語った。
彼が辿り着いた先で過ごした時間は、どうやら有意義だったらしい。
その言葉を隣で聞いていたシャリア・ブルは静かに応じる。
「そう、ですか」
シャアと再会できたことは幸福以外の何物でもない。
だが、5年間。
長い間シャアを探し続けていたシャリアにとって、その発言は少し胸に刺さるものがあった。
「では、なぜまたこちらに帰って来られたのです?」
「…ん?」
シャアが驚くのも無理はない。
最も喜んでいたシャリアが「どうして帰ってきたのか」と問うたからだ。
自分でも意図せず口にしたその問いに、シャリアは嫌悪感を抱く。
――私は拗ねているのだろうか。
沈黙を破り、シャアが告げる。
「あっちには君がいないからさ、シャリア」
たった一言で、全てを許してしまう。
罪な人だ――そう観念したようにシャアを見つめるシャリア。
そんな彼の様子を見透かしているかのように、仮面の奥から密かにほくそ笑むシャアだった。