鉛色の血判 ・明るい話ではないです
・満鉄の路線たちにドラスティックな設定をしています
(ショックを与えるものかもしれないです)
・当時の時制を鑑みた表現があります
・既存設定との齟齬など、甘い部分がある可能性があります(プロトタイプゆえ……)
人気のない山合いを縫う列車は今この夜の中でただ一つの光になっている。
ほんのり橙色を帯びた明かりのもと、燕が開けた窓から吹き込む夜風は体を質量をもって、しかし柔らかに体を包んでいた。
この男がもうその名を冠していないことも、上官の地位も失していることも承知の上で、東海道は呼び名も何も変えていなかった。それが色々な事を傷付けうる行為だと分かっていても、こっぴどく怒られでもしない限りこのままでいると決めていた。意義や意思があるわけではない。何となく、この男に対して折に触れて甘えてしまうところがある。今回もそれに当てはまったので、そうしたに過ぎなかった。
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