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    しの🍙

    @shino_m0

    成人済|右推し右固定|留文|逆リバ❌

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    留文
    ⚠️学パロ
    ⚠️もんじが先天女体化で倫理観が緩い
    https://x.com/shino_m0/status/1914999437698465850の続き。未完

    失恋二人 結局、文次郎らしくない制服姿は一日で終えることにした。次の登校からは胸元までボタンを留め、スカートは膝丈と元の着こなしに戻すつもりだ。
     ブラウスとプリーツスカートだけのシンプルな夏服では、ウエストで巻いたり引き上げてベルトで締めて丈を短く見せることができない。裁断するしかないのだが、校章が裾に刺繍されているので服装検査で見つかれば違反になってしまう。安くはない制服だ。一度切ってしまえば元に戻せない。
     あのひどく短い丈のスカートは、入学が決まったとき近所の卒業生にお下がりで貰ったものだ。履くことはないだろう、と箪笥の肥やしになっていたのだが活用することができた。
     制服も留三郎との関係も元通りといえよう。

     先日のラブホテルでは三時間の休憩のつもりだったけれど、文次郎は帰りたくなくなって延長した。ひとつになれたばかりの留三郎と一緒にいたいから、なんて乙女思考ではなく、同居している兄夫婦を見たくないからだ。生々しく、二人もセックスしたんだという見方をしてしまいそうで。あと、純粋に体力が尽きた。シャワーを浴び直す時間を逆算して、ずっと留三郎にしがみついていたからだろう。避妊具の交換以外はずっと留三郎と繋がっていた。正常位で下になっている文次郎が足を留三郎の腰に回し、固定してやったのだ。普段こんなものをぶら下げているなんて、文次郎にはないからわからないが、俯せでは邪魔じゃないかなあとか関係ないことを考えながら抱かれていた。留三郎だって文次郎を想い人に変換して抱いているのだから失礼ではないはずだ。
     主にそのしがみつきが原因だろう。体育でもこんな体勢をとらないせいで、文次郎の腹筋、股関節、大腿部が限界を迎え、休憩から宿泊へと変更した。腕立て伏せしてたような留三郎は平然としているのが解せぬところである。
     夕方には帰宅しているはずだった予定を変えて、保健室みたいな部屋でごろごろと過ごす。テレビはアダルト番組しか映らないなんてことはなく、地上波や映画を無料で見られた。備え付けのルームウェアに着替えたら、内装以外は普通のお泊まりだ。
     普通の友達らしく、幼馴染らしく遊んで、夜は同じベッドで眠る。一緒に寝るのは中学以来だったか。保健室のようにカーテンでベッドの周囲をくるりと閉じれば二人っきりで、幼かった頃を思い出し文次郎は安心してぐっすり眠れた。眠りすぎて十時近くまで起きなかったが早起きしていたら綺麗な朝焼けが見れたらしい。真っ赤な燃えるような画像を留三郎が見せてくれた。五時前だろうに老人か。

     夏休みも終わり、学校が始まって。ついでに文次郎の生理も始まった。
     重くないほうではあるものの遅くまで起きていたせいで、六時間目から保健室の住人だ。今は何時だろうとスマホを見たら驚いた。痛み止めを飲んで楽になるまで横になっていたら夕方になってしまっている。原則一時間利用のベッドだけれど空いているからいいよと許されたのだが、ここまで寝ていたとは。ぽちぽちとメッセージアプリに溜まっていた通知へと返信をする。
    「文次郎、起きたのか?」
     返信相手のひとり、留三郎に送信したら声がした。半身を起こしてカーテンを引けば何故か居る。
    「お前まだ残ってたの」
    「図書室で課題してた。あ、鞄、持ってきてあるぞ」
    「ありがとな。置いたままでもよかったんだぞ」
     ロッカーに教科書を置いていないから、文次郎の鞄は重いのだ。
    「教室にまだ鞄があったから、見舞いついでだ。返信なくて気になってたしよ」
     気安い態度で接してる男女の幼馴染。クラス内での留三郎と文次郎の関係は恋人と見られている。違うと言っても照れだと勘違いされるので肯定も否定もしないと決めたのに、留三郎の世話焼きのせいでままならない。ありがたくはあるのだが。
    「寝たし、楽になったから帰る」
     養護教諭は席を外しているが帰れるようになったら帰っていいと言われている。
    「うわ、赤」
     ふと窓の外を見れば夕焼けで空が赤く染まっていた。保健室と真っ赤な空。ラブホテルのときみたいなのかなと思った瞬間に文次郎の口が滑る。
    「もっかいヤりたいか?」
    「……文次郎」
     にやにやしながら聞けば窘められた。
    「冗談だよ。付き合ってる人がいるのにそんなことするか」
    「あ? 俺は相手いねえぞ?」
    「お前じゃなくて、私に」
     一人称を、留三郎の前で『私』にするのはいまだにこそばゆいものがある。兄弟たちを真似て『俺』にしていたのは小学校に上がる前だというのに。
    「これから一緒に帰るんだ。じゃあ、また明日な」
     夏休み明けに告白されて、昨日の夜もメッセージの応酬を夜遅くまでしていたのだ。恋を忘れるには新しい恋に限る。文次郎はステップでも踏むような軽い足取りで相手のいる部室へと向かった。

     文次郎に告白してきたのは見知らぬ上級生だった。クラスどころか学年が違えば接する機会はない。きっかけはどこかというと、夏休み前の文化祭で文次郎を見て気になっていたらしい。クラスの教室展示は男女ともに執事というニッチな執事喫茶だった。その場で告白しそびれたそうだが、仮にされていたら義姉を吹っ切れていない文次郎は受け入れなかっただろう。
     耳が隠れるくらいのショートヘアで、可愛いよりは格好いいと称される人。きっと後輩に人気のあるタイプと文次郎はみた。
     互いを知るところから、とメッセージの応酬は楽しかったし保健室を後にした日には唇も重ねた。他に人のいない美術室で、夕焼けを背にしたキスは思い出に残るものだろう。
     相手の家に遊びに行って体も知った。
     だがしかし。
    「私が触るのはダメだって言うんだ」
     こっちの胸は揉むのにあっちの胸はダメってひどくないか。
     文次郎の不満を聞く相手は留三郎だ。
    「男なら、胸は触られたくねえんじゃねえかなー……その、前回のあれ、俺に触りたかったとか思ってたり」
    「別に触りたいとは思わなかったな」
     なにを聞いてくるのか意味がわからない。
    「つうか、なんで男の体の話になるんだよ。こっちはおっぱいの話してんのに」
     文次郎の相手は女の先輩だ。だった。別れたので過去形だ。
     留三郎が変な顔をして腕を組む。そういえば文次郎は言っていなかった。いくら幼馴染相手でも事細かに教える義務もないし。 女を好きだというのはおかしく思われるか。
    「俺の胸も大きいと思う」
    「胸囲で張り合うな」
     相手の性別ではなく違うところに引っ掛かっていた。
    「私もおっぱい触りたいのに!」
     ベッドに突っ伏し、膝を曲げてばたばたと暴れる。下着が見えようと気にしない。
     また二人は保健室に来ていた。ベッドに寝そべる文次郎と、キャスター付きの椅子に腰掛ける留三郎。高校のではなく海辺のラブホテルだ。留三郎の部活が休みの曜日だと知っているので、教室の掃除を終えたのを見て連れ込んだのである。
    「と、いうわけで振られましたし振りました!」
     寝返り、仰向けで大の字になり宣言する。原因は性の不一致だ。女体には文次郎だって積極的に愛撫をしたいのに、一方的にされるがままは意思に反する。
    「失恋したので人肌が恋しい!」
     性行為以外は好きになっていたのに、どうしても主張を譲れなかった。
    「それとせっかく買った勝負下着を披露したいから見てくれ!」
     色気もなにもなくスカートを捲る。
     新調したのに披露できず無駄になったのだ。勿体ないと着用してきたのは、透け刺繍の花の入った上下セットである。刺繍のない生地部分も肌が薄く透けて見えるので、体育がある日では更衣室の着替えが恥ずかしくてちょっと無理だ。
     がたた。音の発生元は留三郎が椅子から落ちたことによるものだ。キャスター付きの椅子が流れて壁にぶつかり止まった。
     もしかしたら、もっと面白いことになるのではないだろうか。
     上も見せてやろう、と文次郎はブラウスのボタンを外しながらベッドを降りる。乳首の部分に刺繍があるのでより妄想させるに違いない。童貞ではないし、下着の中を知っているのにこの新鮮な反応が愉快だ。
     シャワーを浴びずにセックスすることになっても許すつもりでからかい倒した。

    * * *

     ひと月ともたなかったお付き合いだったが新たに、今度は文次郎から相手を探しだした。
     明るい色の髪は緩く波を打ち、肩をこえる長さ。一人目とは正反対だろう、ぽやんとした癒し系の先輩だ。花壇の世話をしている姿を見て文次郎は天啓を受けた。
     一緒に水やりをして会話をし、SNSのアカウントを交換するまで親しくなる。学校帰りにお揃いのバレッタを選び合って髪を留めてみたりぐいぐい積極的に距離を縮めた。少し、接触の多いお友達。そうして意図的に作った隙や言動で相手に文次郎を意識させ、事故を装って唇を奪う手法でお付き合いに漕ぎ着けた。

     ところで文次郎の兄は厳しい。「兄さん、小遣いが欲しい」と言ってもくれはしない。きちんと使いみちに加えて「お兄ちゃん、おこづかいちょうだい」と言わなければいけない。
     これは文次郎にとってキツいものがある。兄のことは嫌いではないが投げやりに言うと許可が出ないのだ。普段は兄さんと呼ぶところを幼い頃のように甘えた口調にしなければならないうえ、兄のいる時間帯なら傍には義姉がいる率が高い。微笑ましく見守られてしまう恥ずかしさといったらない。
     挙句、留三郎に迷惑を掛けないように小言を言われる。
     使いみちを聞かれ、咄嗟に留三郎と遊ぶからと嘘をついたからだ。留三郎は兄の印象がいいから、つい。
     それにまったくの嘘ではない。
     またしても保健室登校だ。学校帰りに有料のご休憩である。
     留三郎が無駄遣いをしないとしても、高校生に数千円単位の出費は痛すぎる。他の遊びでは割り勘や留三郎の奢りを歓迎する文次郎だが、こればかりは連れ込みの責任者として小遣いに余裕のある文次郎が支払っている。
     部屋に入ると早々に文次郎はベッドへと突進した。
    「キスだけで満足されても!」
     ベッドの上で大の字で吼えた。二人目の恋人は清楚そうな外見のまま、中身も清純だったのだ。
     子供のように手を繋いだり、本当にただ唇と唇をくっつけるだけの口づけしかしていない。体が目当てではなくとも、文次郎の気持ちだけが盛り上がって消化不良ではないか。けれど、関係を先に進めたくてもそういうのはいけないと止められてしまえば無理強いはできなかった。長く付き合えばそのうち、なのだろうが文次郎は体を重ねないことには寂しいままだ。
     デートとして行ったスーパー銭湯で裸は見た。友人として背中を流すのはありでも恋人としてのお触りは禁止され、文次郎にとって嬉しくも生殺しの時間を過ごしたのだ。
     手のひらから伝わる体温は心を落ち着かせてくれるのだから、裸身で抱き合ったらきっともっと幸せな気持ちになれただろうに。
     口づけより先はダメ。それにどうしても耐えられなくて別れてしまった。
    「俺とのキスは」
    「しない!」
     おっぱいに続き、なんとなくお約束のように張り合ってくる留三郎を否定する。否定されることをわかってやっている節がありそうだ。
     キスはしないけれど、一緒の風呂はどうだろうか。別々に入るより時間短縮になる。
     脱衣場で脱ぐのもここで脱ぐのも大して変わらないから、と制服をハンガーに掛け下着姿で留三郎を浴室まで引っ張っていく。上下揃ってなくても気にならない。童心に帰って風呂で遊ぶのも楽しいはずだ。

     風呂上がりの運動をこなし、汗を洗い流したら文次郎のリセットは完了する。夏から月に一度は来ている、三度目の帰り道も見慣れてきてしまった。
     駅へ向かう道で、ふと文次郎は足を止めた。
     海と道路を区切るガードレールの下は急勾配な石垣で、積まれた波消しブロックによって白波が届かないようになっている。道路の反対側は緑が茂るがこの狭い範囲のガードレール沿いにも花が咲いていたのだ。どこから種が飛んできたのか自然は逞しい。
     色とりどりに白、桃、赤、それと黒紫。付き合いが短期間でも相手の趣味に染まる文次郎なので、これらの名前を知っている。
    「コスモスか」
    「珍しい色だな」
    「この濃いやつ?」
    「詳しくねえけど、コスモスつったら白とかピンクだとばかり」
    「確かになー」しゃがんでつんと花をつく。「乙女の真心、純潔、調和、謙虚ってのが花言葉なんだけど、黒っぽいのだけは後ろ向きでな」
     合わせて留三郎もしゃがむ。
    「ふうん?」
    「恋の終わり、恋の思い出」
     記憶力には自信がある。色々、文次郎は植物について詳しくなった。
    「……へえ」
     留三郎がコスモスをスマホで撮影する。前に朝焼けを見せてもらったが画像一覧は景色ばかりで何が琴線に触れるものやら。
    「それと、移り変わらぬ気持ち。
    ㅤ私は次に進むけどな!」

    * * *

     いつだったか留三郎に触りたいとは思わないと返した文次郎だが、一箇所だけは別だ。
     直毛の文次郎とは違うふわりとした髪。これは文次郎のお気に入りだった。
     中学校では校則のせいで短く整えられていたが、高校に上がると伸ばしてくれたのでつい目で追ってしまう。ぬいぐるみのように留三郎の頭を抱え、わしゃわしゃと撫でるのが癒されるのだ。
     小学生のときはよくやっていた。身動きをしない留三郎はまるでぬいぐるみのようでよかったのに、抱えるのはやめてくれと訴えられたものだ。それなら代わりに自分の頭も好きにしていいから、と文次郎は何度も交換条件を出したのに断られたので兄に相談したこともあった。留三郎が可哀想だからやめるように言われてしまったが。可哀想なのは、ふわふわの頭部を目の前にしても触れない文次郎なのに。
     そんなことを思い出しながら。
    「おじゃましまーす」
     暑さのまだ続く中秋の休日。文次郎は留三郎の家にやって来た。
     文次郎の家からは歩いて行ける距離にある。学区が同じなのだし小学生でもよく遊びに来ていた。おしゃれ重視の厚底スポーツサンダルではなく歩きやすさ重視のほうなので足に負担も少ない。
     文次郎の大好きな、留三郎の母がいるならおしゃれ重視だったが、オフショルダーのブラウスにリラックスパンツを合わせた所謂ゆるコーデである。
     本日の留三郎の両親は留守だ。このシチュエーションなら目的はひとつ──でもなく。文次郎は留三郎のふわふわな髪を狙っている。
     新たな恋人を見つけられていない文次郎だが、失恋したわけではないので留三郎とセックスはしない。けれど、寂しさは埋めたい。
     そこで求められたのが髪だ。
     記憶にあるあのもふもふでふわふわに顔を埋めたなら解消されるに違いない。

     きちんと数日前に留三郎の用事を確認したというのに、前日になって断られかけていた。
    『父さんも母さんも出掛けるから、家には俺しかいねえんだよ』
    『お前は出掛けないんだろ?』
    『家に二人になるんだっての。俺は男だぞ』
    『男だけど留三郎だろ』
     覚えてろ、遊びに行くからな。メッセージアプリのやりとりだったが文次郎の発言の後、なにも応答がなかった。今までも二人で遊んだことがあるのに、両親不在のなにが問題なのか。未読スルーをさせるものかと数分おきにスタンプを送っていたら了承と返ってきた。文次郎の勝ちだ。
    「文次郎、肩出すぎじゃね?」
     玄関で出迎えた留三郎の言葉はいただけない。Tシャツとハーフパンツを顔で着こなすおしゃれに無頓着な男はこれだから。
    「落ちるって」
     そういう服だし、胸元にシャーリングが入って絞られてるから落ちないし。
     本気ではらはらしてる様子なので不快ではない。
    「いや、大丈夫だから、ほんと」
     その場で文次郎が二、三回跳んで落ちないことを証明すると渋々納得したようだ。なにか言いたそうにしているのでまた口を開く前に靴を脱いで上がり、留三郎の背に回って押す。
    「ほれ、部屋に案内ー」

     留三郎の部屋は二階にある。
     ドアを開けた正面の窓側にベッド、右手に本棚と学習机のシンプルな部屋だ。テレビはない。 整頓されてはいるものの、プラモデルだのがあるせいでごちゃついているように感じる。
     本棚に並ぶのは小中学校のアルバムに文集、教科書、参考書と漫画たち。文次郎のオススメの参考書を読んでくれているようで嬉しいが、年頃の男としてエロ本の一冊や二冊ないものか。
     茶菓子を取りに行ってる間、好きに本でも見て過ごすよう言われてるので物色する。留三郎が戻ってきたら本格的にエロ本を探してやろう。
     留三郎の家族アルバムもあった。以前は置いてなかったのにと手に取り、ベッドに座ってページを捲る。幼稚園の頃のアルバムだ。ごく自然に文次郎も家族のように混ざっていた。恐らく文次郎のアルバムにも留三郎がいるのだろう。
     捲っても捲っても同じポーズで写っている双子のような二人だが、中でも目を惹く一枚があった。
     留三郎の頭を抱きかかえて眠っている文次郎。
     一枚ではなかった。ちょくちょく撮られている。愛着が湧いている原体験はこれではなかろうか。
     楽しくアルバムを見ていると、硬いものがぶつかる音がした。戻ってきた留三郎の手から折り畳みのローテーブルが滑り落ちたようだ。
    「うわ、大丈夫か」
    「なんで、お前はベッドに」
     片手に長方形のお盆、もう片手にローテーブル。手が滑ったのだろうが足に落とさず、長手盆の上も無事らしい。声を掛けてくれたならドアを開けたのに。
    「座りやすいし」
     ごろごろできるので文次郎は布団を愛している。隈はあるが、睡眠が嫌いなわけではない。
    「はいお前もこっち座る」

     アルバムを見てひとしきり当時の思い出を語って。懐かしいから、そんな理由で留三郎のハーフアップをおろさせることに文次郎は成功した。もさもさの姿がいい。
     ローテーブルの上の長手盆には麦茶と羊羹があり、これで留三郎の気が緩んだのもあるだろう。羊羹は留三郎の母の手作りで、市販の細長く大きな一棹分はあった。食べやすいように切り分けられているそれは、少し甘さが抑えられてるとはいえ留三郎の口の中に消えていく。
    「おばさんのお菓子はおいしいけどさ、よくそんなに入るよなぁ」
    「兄貴に比べたら、俺はそんなに食わないほうだけど」
    「十分、私より食べてるから」
     兄を引き合いに出すが、文次郎がひとつ食べる間に羊羹がふたつ、みっつと消える。早食いではなく普通のペースだと言い張るのだ。
     ちょうど小腹がすいた頃合だったので食べていれば、残りはひとつ。
     最後のひとつは昔から半分にすると決めている。アルバムでも分け合っていた。 フォークで割って、平らげて。もう一度アルバムを見ようと誘い、ベッドに寝そべった隙だらけの留三郎の頭を狙う。ぎゅうと抱き締めて文次郎は眠りに落ちた。
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