伏せ用スペース
1.膝枕
「…寝ちまったのか。全くお気楽な人だな」
その声に物憂げな様子はなく、髪を梳く手も止めない。目の錯覚かもしれないが、桐生の目には桐生が髪を撫でるように梳くと真島の表情が少しばかり和らいで見える。
「…き……ぅ……ちゃ…」
「ん、兄さん」
やりすぎたかと手を止めると、真島の色艶のいい手が物欲しそうに桐生の手を握る。
……起きてるのかと思ったがどうやら寝言のようだ。兄さんは…俺の名前を呼んだのか?
胸の奥で何かが焦げ付く。その焦げ付きが何かわからずに桐生はモヤモヤとした想いからか握られてる手とは別の手で真島に触れる。だが、モヤモヤは取れなかった。
少しばかり経った頃、声にはならないが真島が呻くのが聞こえた。
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