結論から言うと6月17日は桐生の誕生日だった。だった、というのは、今や時計の短針は12時を過ぎているからだ。結論から言うと、真島は昨日丸一日桐生の前に姿を現さなかった。一歩歩けばどこまじに当たる、そんな桐生の神室町の日常は、己が生まれた日に限ってなかなか静かな(当然チンピラには絡まれたが)ものだったのだ。これには流石に、エリート・鈍感の桐生も頭を捻った。元より祝ってもらえるなどと思っていなかったが、『祝ってもらって嬉しいやろ?その気持ちを返す筋があるよな』といった具合に喧嘩に持ち込むことは予想していたのだ。ところがどこに向かえど、桐生を祝う知り合いをよそに、真島はどこにも現れなかったのである。一体どこに行ってしまったのか、また事件に巻き込まれたのか、だとしても俺には関係ないが、いやに気味が悪いような。そんなことをぐるぐる考えて、眠りについた時には日が上りそうだった。
1910