かぞくのとびら(The way to say I'm home.)10.
一向に雨のやまない窓の外へ視線を移しながら、悠仁は「俺ね」と切り出した。
「恵と野薔薇を見た時、初めて会う気がしなかったんだ。二人が俺の隣を離れなくてさ、こうぎゅうぎゅう挟まれて。あまりにも動けなくてじっとしてたらそのまま二人、俺の体に寄りかかって寝たんだよ。それがなんか……すごくしっくりきて……懐かしかった」
ふいにいつかの任務帰りを、僕は思い出した。西日の高速道路、振り返った後部座席。眠る恵と野薔薇に挟まれた悠仁は優しい表情をしていた。
きっと、二人と再会した日の〝虎杖先生〟も。
「〝先生〟やってる俺がこんなこと言っちゃだめなんだけどさ、二人は特別かわいいと思ってる。他の子供たちの〝可愛い〟と……ちょっと、ううん、全然違う……あ、これ秘密だからね」
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