遺書、改め。「私が死んだら骨をあげる」
どんな流れでそんな話になったんだったか。
思い返す。そうだ。
やあ曲者だよ、と軽く手を上げながら前触れなく忍術学園の保健室に現れた雑渡に──もう慣れたものなので伊作も伏木蔵も驚くことなく、お茶と茶菓子を用意して三人でのほほんとお喋りに興じていた時、脈絡なくコーちゃんの話をし始めた伏木蔵に雑渡が「コーちゃんて?」と聞いたのがきっかけだった。
コーちゃんは伊作の大切な人体骨格標本である。
その日コーちゃんは長屋の部屋にいて、保健室には不在だった。「コーちゃんは伊作先輩の大切な骨なんですよ〜」という伏木蔵の説明に雑渡が疑問符を浮かべながら首を傾げたので、伊作はここぞとばかりに如何にコーちゃんが己にとって大切な骨格標本であるか、どんなに素敵な骨かを雑渡に語った。雑渡はウンウンと頷きながら伊作の話を聞いていた。伏木蔵はお饅頭を頬張りながらモチモチの頬を揺らしていた。
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