無劉
無劉タイトル未定
「劉備、見てくれ。花が咲いてる」
さっきまで戦さ場で浴びた返り血でどろどろになっていた男が、今、すんっとした顔で、川縁に沢山群れて小さな山を形成している濃い葉色の木に満開の石楠花…シャクナゲを指さしている。
明るい赤紫の花弁は蒼天によく生えた。
「美しいな」
苦笑して受け答えると、無名はうんと頷いて、劉備を見た。
「劉備みたいに」
その目元が綻んだのは見間違いではない…照れて笑って否定しながら、劉備は無名のその一瞬緩んだ表情が内包する想いを、心から信じたいと思った。
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我ながら無様な事だと思う。
まんまと呂布達にしてやられて、下邳を奪われてしまった。
口にはしないが、関羽がそのように思っていても致し方ない。
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