也譲ショート ひざまくら 譲介の部屋は床面積のわりに広く見える。ものが少ないからだ。彼の職場であるメディカルセンターから徒歩二十分以内にある四階建ての学生向けアパートの二階。簡易キッチン付きのワンルーム。彼がとっくに学生でなくなってからも大家と交渉して住み続けている部屋だ。一也が訪れたのは一度や二度ではないが、インテリアや趣味のものが増える様子は一向になく、変化するのは机の周りだけに積み上げられた本の高さくらいのものだった。
その日も同様に、一也が首を巡らせると、視界に入るのはいつも通りの光景。医学書や語学書に埋もれた彼の机。アメリカの公休日が載っている壁掛けカレンダー。シーツと同じ白色のパイプベッド。部屋を借りたときについてきたらしい、今腰かけている布張りのソファ。そして、視線を落とすと、一也の膝の上で眠り姫のようにぐっすりと寝ている同い年の青年。
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