ひとりホリデーシーズンという事で、学園は長期休暇に入った。
僕──カルロッタは、帰る家も無く学園でホリデーを過ごすことにした。
学園に残ってる生徒もちらほらいるので、いつもの騒がしさは無いものの、誰かがいることにほんの少し安心した。
ししょーも兄さんも姉さんもいない、久しぶりのひとりぼっちだった。
こういう時に、ああ、友達を作ればよかったと思う。
しかし僕は、友人より勉強を取ってしまったのだ。
ここには口うるさい講師も、叩いてくる講師も、冷える冬に外に放り出して放置する講師もいない。
学園に入る前は、それはそれは地獄だった。
毎日のように勉強、出来が悪ければ体罰。
どうせあの施設の人々は「出来のいい光」が欲しかっただけだろうに。
「あなたの為よ」だなんて、嘘だ。
僕は苛立ちを表に出さないように学園内を歩く。
……気付けば学園の外に出ていた。
雪の降り積もる学園の裏庭、僕は雪をさくさくと踏みながら歩く。
寒い、けど、この寒さが心地いい。
僕は心の中でふと、考えてしまった。
ししょーも兄さんも姉さんも。
大事な人たちはいずれここを去ってしまう。
そうしたらまた、ひとりぼっちだ。
………ひとりは、苦手だった。
でもそんな事言ったら、ししょーにも兄さんにも姉さんにも笑われてしまう。
ひとりは、こわい。
ひとりは、つらい。
ひとりは、かなしい。
ひとりは、いやだった。
今まで押し殺してきた感情が押し寄せて、強烈な吐き気を呼び起こす。
ちがう、ちがう、こんなの、ちがう。
ぼくは、だいじょうぶ。
ししょーやにいさんやねえさんがいなくなっても、
ぼくは、だいじょうぶ。
だって今まで、そうしてきたでしょう。
僕はリトル仮面を外して、元の身長に戻す。
ほら、こんなにも大きい体で泣いていたら笑われてしまう。
それでも今は、ほんの少しだけ。
心の孤独感を埋めるように、泣かせてください。
「1人は、嫌だなぁ。笑っちゃうなぁ。情けない」
誰もいない裏庭で、カルロッタの声が虚しく雪に溶けた。