四話 不幸は突然に「ただいま」
玄関のドアを開けると同時に真っ暗な家へそう挨拶した。
挨拶は昔からの癖だ。おかえりといってくれる存在はいないとわかっていても、帰ってきたらかならず「ただいま」という。
特別な意味はない。ただ、自分の中にある負の感情を少しでも外に出したいからそうしているのかもしれない。
理屈をつけたって、結局やっている行動の意味はないから考えたってかわらないだろうけれど。
「はぁ……食欲ないな……」
玄関をあがってリビングへ向かう。冷蔵庫の中に何か残っていただろうか。
カバンをリビングにある椅子において、冷蔵庫を開ける。中身はほぼ空っぽに等しいくらいの量しか入っていなかった。最近買い物をサボっていたからだろう。
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