【P5夢】His palace(前日譚)※明智視点 R18その夜はどうしてその気になったのか自分にもわからない。
僕の知らない場所での話をする彼女に意地悪したくなったのかもしれない。
いやもっと違う……そう、あいつの名前が出てきたからかもしれない。
『リーダーね、授業が自習になったとき教室で潜入道具作ってるんだよ?びっくりしちゃった』
その光景を思い出すかのように微笑む彼女。
いつもの僕だったら「教室でそんなことして馬鹿なやつだね」とかなんとか言うはずなのに、それができなかった。
彼女にはどうにもできないこと――例えばあいつと同じ学校、同じクラスであることから始まって、
あいつのことをリーダーと呼ぶことも、
授業中にあいつのことを見ていた事実も、
自分とふたりきりのとき、よりによってあいつの話題を出すことも。
全てに苛立ちを覚えた。
『明智くん?』
『ん、ごめん。……そうなんだ』
不思議そうに顔を覗き込む彼女にこの感情が伝わらないことにさえ苛立ってしまう。
何度も体を重ねてひとつになってるんだから、もっと奥深く、心まで繋がって、自分のこと以外考えられなくなればいいのにとさえ思う。
だからこそ、彼女とひとしきり抱き合った後のこと。
乱れた息を整えながら、でもひとときも離れたくなくて、まだ熱い肌を寄せる。
汗ばむ肌はまるでぴたりとくっ付くかのように引き寄せ合って、触れた場所から溶け合ってしまったらいいのにと何度思ったことか。
高校生探偵、学業、怪盗団のメンバー、獅童のサポート……いくつもの仮面を被って張り詰めた日常を送っている自分にとっての安らぎの時間。
彼女が自分の感情に応えるように僕の手を取って頬に押し付ける。
その姿が愛しくて、眩暈を覚える。
溢れ出す愛しい感情の合間、ふと先ほどの出来事がよみがえった。
『リーダーね、授業が自習になったとき教室で潜入道具作ってるんだよ?びっくりしちゃった』
それは本当に突然で、満たされた自分の心を誰かが意図的に抉って傷を付けようとしているような。
あり得ないがそんな人為的なものさえ感じた。
過去に消した誰かの恨みなのか、それを気付かないうちに後悔している自責の念なのか。
理由が何なのか定かではないけれど、それは突然、でも確かに自分の心に影を落とす。
「…………」
「どうしたの?」
「…………」
もう十分な時間を過ごし収まっていたはずの熱がまた蠢くのを感じた。
無言で起き上がり、ブランケットを乱暴に押しのけ、隣で横たわる彼女の上に跨るように体を滑らせる。
「あ、明智くん……?」
先ほどまで繋がっていた彼女のそこは既に綺麗にしたけれど、未だ汗ばむ肌はまだ自分を受け入れてくれそうだ。
彼女は下肢に擦りつけられてるモノに気付き、一瞬驚いたように目を見開いてから顔を赤らめる。
もうかなり遅い時間。シャワーを浴びて寝ようとしていたところだったから。
彼女の腹を手のひらで意味ありげに撫でて、にこりと微笑む。
「ねぇ、もう1回シたくなっちゃった」
「なっ……」
「いいでしょ?」
優しい彼女は断らないだろう。そのまま上体を倒して彼女に覆い被さり耳元で囁き、上気している耳を舐める。
「ひぅっ……んっ」
肩を竦め、僕の胸に手を付き押し返そうとするが力が入っていない。本気の抵抗ではないのだろう。
これはOKの合図だ。
「いいよね?」
もう1度確かめるように囁く。君が受け入れたんだよと、これからまた始めるセックスの理由を責任転嫁するように。
「っ……」
囁くだけで震える彼女は何も言わない。
無言を肯定と受け止め、もう1度嬉しそうに笑って見せる。
そして耳元から唇を滑らせ、首にたどり着くと、そこをちゅうと強く吸った。
「んっ!」
――ここなら、あいつに見えるかもしれない。
首元の半分がインナーに覆われている秀尽学園の制服だが、この場所ならふとした瞬間に見えるかもしれない。
そう考えて。
「ちょっ……!そんな見えそうな場所……!」
「えへへ。ごめんごめん」
興奮しちゃってつい、と。
へらりと笑って誤魔化し、彼女の胸を押しつぶすように優しく掴めば可愛い声を上げる。
早くその場所を忘れてくれるよう願いながら、攻め手を加速させる。
明日、あいつが気づけばいい。彼女は僕のモノだという警告を。
彼女に変な気を起こさないように。