足跡怪談? アンタも物好きだな。俺からそんな話のネタが出るとでも?
・・・ああ。理屈で説明できない事象も、怪談に入るってんなら、無くもない。それなりに長く生きてりゃ、そういうこともある。
思い出しても、あれは妙なことだった。
とある廃墟近くで野営していたときのことだ。
夜の見回りに出ると、フードを被ったハンター風の男が待っていた。
名は思い出せん。まあ、いつものことだ。
「あんたが今日の相方か?」
と声をかければ、黙ってランタンを持ち上げる。
ハンターには気まぐれな奴もいれば、変わり者も多い。特に気にすることもなかった。
二日目の夜も、同じ時間にそいつは現れた。
やはり無言で、俺の横を歩いた。
三日目の夜。
二日間歩いたのと同じ道を進んでいたはずなのに、その男は途中で範囲外の方角へ逸れていった。
1169