初秋「こんにちわ、依島さん」
「なんで払い屋がここに来るんだ。とっとと帰れ」
「何言ってるんですか、私に頼み事をしたくせに」
と、少し古びた何冊かの本が入った紙袋を渡したあと、ちょっと小洒落た洋菓子店のような小ぶりの紙袋を差し出した。
「(オモテの)仕事で差し入れで貰ったお菓子がなかなかだったので教えてもらいましてね」
と喰なさそうな薄ら笑顔を浮かべながら
「ここのチーズタルトがなかなか美味いんですよ。」
(食いもんなんかにあまり興味ないくせに)
「、、、うちには緑茶しかないけどな」
と名取に背を向けながら上がっていけと無言で促す。
久方ぶりに食器棚の奥まったところから、二人分のフォークを引っ張り出して、男二人、無言でしばらくは小さめのチーズタルトを喰む。
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