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    ルシウスとジェームズが同学年だったif世界線の四年生半ば頃の話

    ##同学年if

    花冠 ルシウス・マルフォイは絆されている自覚があった。
     誰にって、それはもちろんグリフィンドールきってのお抱え問題児、ジェームズ・ポッターに。


     ホグワーツに入学する前のルシウスの世界は、モノクロか、そうでなくともひどく彩度の低いもので。マルフォイ家の嫡男として恥ずかしくない人間に育てるために施されていた教育はそれなりに大変なものであったが、幼い頃のルシウスには、ソレの大変さよりも退屈さがただただ苦痛だった。
     友人は全て父上が選定している上、損得勘定をベースにした関係を築いている為親しい友もおらず。父上との間にプライベートな雑談などなく、幸せな家庭のモデルケースのような穏やかな一家団欒などない。

     幼いルシウスには、とても、それは退屈な日々だった。せめて少しでも愛情をくれたらと、齢一桁にして何度も願った。
     父上から愛情をもらったことがない、というルシウスの認識が間違っていたらしいことがつい最近判明したが、今は関係ないので置いておく。これに関してはわかりにくい父上が悪いということで決着がついたので。
     ……蛇足。


     そんなつまらない人生を歩んできたルシウスは、どうせホグワーツに入ったところで何も変わらないだろうと思っていた。件の男がコンパートメントに乗り込んでくるまで、本気で、そう、思っていたのだ。

     詳細は割愛するが件の男──ジェームズ・ポッターは、いとも簡単にルシウスの人生に極彩色を持ち込んでみせた。
     スリザリンが嫌いで、拒絶しても軽くいなし、魔法をイタズラに使い、話がコロコロと変わり、屈託なく笑い、遠慮がないと思えば引き際は案外わかっている、初対面の人間に人気の味だなどとタチの悪いデタラメをほざいて百味ビーンズのゲロ味を食わせてくるような同年代の子供は、ルシウスにとって完全に未知なものだったのだ。本当に。
     モノクロで統一された温室育ちの箱入り息子には、この極彩色は刺激が強すぎた。

     最初は鬱陶しいと思ったし、うるさいと思った。実際うるさかったし今でも変わらずうるさいと思っているが、まぁ思ったのだ。
     でも、……だから、というべきか。鬱陶しいしうるさいしできれば長時間同じ空間にいるのは避けたかったが、それ以上に、もう少しだけこの男と交流したいと、そう思ってしまったのだ。
     故に寮の話になってもレイブンクローあたりだろうと誤魔化して、名乗る時もファーストネームだけを教えた。己がスリザリンに入ることがほぼ確約されているマルフォイだと分かれば、純血主義もスリザリンも嫌いなこの男は、今浮かべている笑顔を消し去って嫌悪か嘲笑に満ちた表情で罵ってくるだろうことは想像に難くないから。

     その予想に反し、ジェームズ・ポッターは組み分けでスリザリンとグリフィンドールに分かれてからも度々己に絡んできた。顔を合わせるとほぼ毎回。
     それも、いわゆるダル絡みというものではあったが、他のスリザリン生にしていたようなイタズラと称してタチの悪い呪文をかけるでもなく、スリザリンだからと嘲笑を向けてくるでもなかった。
     すごく鬱陶しくやかましかったが、それでもルシウスには、人生に極彩色を持ち込んだこの男の作り上げる喧騒を完全に拒むことはできず。今ではすっかり友人のような立ち位置に収まってしまっているというわけである。


     そんなルシウスは、ここ最近、他人に指摘されてようやく気が付いた事があった。少々癪だが、ジェームズ・ポッターに似てきている、というものだ。
     そんなバカなと思ったが、己の思考回路や行動を鑑みて、なるほど確かに、と思ったわけである。多感な時期に、たった一人の人間に極彩色を持ち込まれれば、多少性格が似るのも仕方がないことだ。さもありなん。本人には絶対に言ってやらないが。

     ところでルシウスが一番ジェームズ・ポッターに似てきているのを実感するタイミングといえば、それはジェームズ・ポッターに仕掛けるイタズラを考えている時である。

     たとえばそう──自分に気付かずに廊下で級友と話しているジェームズ・ポッターなど、今のルシウスからしてみれば、格好の的でしかないのだ。



    「終わったなら早く来い、ルシウス。あんまり待たせるとリリーに怒られる」
    「あぁ、今行くよ。……ふ、君は相変わらず彼女に弱いな」
    「う、うるさいな!」





    ——————————





     頭の上に何か軽いものがぽすんと乗った感覚がして、ぷつん、と会話が途切れた。
    「ん?」
     触ってみればどうやら花冠らしい事がわかったが、どうにも頭の上から外れてくれないソレに、このくだらなくもやたらと高度な呪文はルシウスの仕業だろうとあたりを付ける。

     コンパートメントで初めて見た時はあんなにつまらなさそうな目をしていたのに、今では自分の頭に取れない花冠を乗せてくるようになったのは、自惚れでも何でもなく自分のダル絡みの賜物だとジェームズは自負している。
     随分と愉快なことになったよなぁと思いつつ、目の前で爆笑している友人たちに目を向けた。
    「君たち、何をそんなに笑ってるのさ?」
     ひとしきり笑い終わって落ち着いた一人が、涙を拭いながら口を開く。
    「七色に輝く猫耳みたいな形の薔薇の花冠が、お前の鳥の巣の上で徐々に生まれてって、しまいには優しく不時着したら誰でも笑うだろ」

     ぱちり、瞬きを一つ。

    「七色に輝く?」
    「そう」
    「猫耳みたいな形の?」
    「ンふッ、そう」
    「バラの花冠?」
    「そ、ンッふフフ」

     赤とか白とか青とかではなく、七色。しかも友人の目の中に反射する光を見るにどうやら色が常に移り変わりながら発光までしてるっぽい。
     普通の形では何がダメだったのか、なぜか猫耳。
     そしてなぜか薔薇。なぜ薔薇。触っても痛くなかったあたりきちんと生花だし、ご丁寧に棘まで取り除いてある。

     一つ一つ、ルシウスが自分の頭に乗せたと思しき花冠の特徴を並べていくと、もう無理だった。


    「ふ、ふふ……ンッフフ、あはははははは!! あの、あのルシウスが!! ッルシウスがバラを七色に輝かせンハハハハハハハ!!」



     あんなマジメ腐った見た目と態度をした男が、ただ花冠を乗せるだけでなくこんなに愉快なアレンジまで加えるようになるなんて、全くあの時あのコンパートメントに入った過去の自分を褒めちぎってやりたい気分である。
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