讃歌と晩鐘(1)平地の多いP王国において、その風景は異質だった。
柔らかな線の丘陵が連なり、南に向かうにつれ、次第にそれらは明確な山岳地帯へと形を変えた。
濃淡のある複雑ないくつもの緑と、黒みを帯びた山肌がモザイク模様を織り成し、初夏の光を湛えている。
山の中腹を走る道の上に、一台の馬車がある。
中には4人の男たちが座っていた。
歳の頃20代半ばほどだろうか。黒い頭巾を身に付けた大男、オクジーは、向かいに座る相棒の男を見た。
細い目と小柄な身体の中年男の名前はグラス。同じ民間警備組合(代闘士組合を兼ねる)の相棒であり先輩格だ。オクジーと同じように、風貌を隠すための黒い頭巾を被り、長旅にうんざりしたように時折首を振り、小窓から外を眺めている。
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