隅から隅まで掃除しないと出られない部屋「頼むぞ暁人。オマエだけが希望なんだ」
いつになく真剣な顔をしたKKが、まっすぐに暁人の目を見つめて言った。
「お願いします!」
「期待してるわ、暁人くん」
泣きそうな顔で勢いよく頭を下げる絵梨佳と、その隣で深くうなずく凛子。
キッチンとリビングが一体となった八畳ほどのワンルーム、実にその三分の一を占めるソファベッドに、彼女たちは座っていた。窓からの明るい陽射しに照らしだされる二人の膝上には、小柄な白猫と黒猫がそれぞれうずくまり、ゴロゴロと機嫌よく喉を鳴らしている。
あまり大きくはないその重低音も、狭い室内ではよく通る。耳ざとく聞きつけたらしいKKが、激しく舌打ちした。彼はわき目もふらず暁人だけに視線を向けたまま、猫の鳴き声を打ち消す大声を出した。
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