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    7co_0417

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    高さこ♀の学パロです
    にょた化、年齢操作、左近がモブに恋してる描写があります。

    高さこ♀ 学パロ「ずっと好きでした!付き合ってください!」
    「よろしくお願いします」
    抜けるような青空の下、一組のカップルが成立する様を川西左近はこっそり覗いていた。
    「…おめでとう」
    赤く染まった顔はキラキラと輝き、喜びが溢れている。
    ああ、なんて幸せそうなんだろう。
    「ずっと、好きって言ってたもんな〜…」

    俺、好きな子ができた。
    その言葉を聞いたのは一年程前だ。
    長い付き合いの中でもう知らないことなんてないと思ってたのに、全く知らない表情を初めてみた。
    「…そうなんだ、頑張れよ!」
    そう言って肩を叩いた手が震えていたことに、彼は気付かなかった。
    左近が大切に、大切に育てていた恋心が枯れていくのを感じた。
    その日から、左近は良き友として彼の相談相手となった。
    連絡先を交換できた、挨拶できた、世間話ができた、一緒に写真を撮れた。
    そんな話を聞くたびに、胸がずたずたになった。
    「…よかったじゃん!」
    一拍置いた「よかったね」に彼は気が付かなかった。
    渾身のギャグが滑った、ラインを既読無視された、喧嘩してしまった、もう嫌われたかもしれない。
    そんな話を聞くたびに、上がりそうになる口角を必死に抑えた。
    「…大丈夫だよ!頑張れ!」
    じゃあ、僕にすればいいじゃん。
    何度も口にしようとした言葉は、日の目を見ることはなかった。
    理解のある友人として、頼りになる友人として、一番仲のいい友人として、左近はずっと彼の側にあった。

    いつか、彼が振り向いてくれるかもしれないと信じて。

    「ダメだったなぁ」
    校舎の影に隠れるようにしゃがみ込む。
    「僕だって、ずっと好きだったんだよ」
    ずっと我慢していた涙が瞼を乗り越える。一度溢れてしまうと、なかなか止まってくれない。
    涙はどんどん流れていくのに、左近の想いは一緒に流れてはくれない。胸を引き裂かれるような気持ちは左近の真ん中に居座ったままだ。
    ぐずぐずと溢れる涙を拭っていたその時、ガラリと音がした。
    見上げると、頭上にある窓が開き微妙に見覚えのある顔と目が合った。
    「すまない」
    微妙に見覚えのあるその人は、慌てたような表情で顔を逸らす。
    ぐしゃぐしゃの泣き顔を見られたことに、一瞬で頭に血が上る。
    見ないでください!と声を上げようとしたが、彼は何も悪くない。たまたま左近と鉢合わせてしまっただけだ。人目があるかもしれない場所に居座った左近が悪いと言えば悪い。
    「いえ、こちらこそ…」
    ぼそぼそと返事をして、左近も顔を逸らす。
    「もし良かったら、これ。ちゃんと未使用の綺麗なやつだから」
    差し出されたのは、綺麗にアイロンのかかったハンカチだった。
    「…大丈夫です」
    左近が固辞すると、彼は困ったような笑顔を浮かべる。
    「私のためにも使ってくれ。泣いてる女の子を放置するような男にさせないでくれないか」
    そう言われて断るのも何だか悪い。左近は彼の手からハンカチを受け取り、顔に当てる。
    「…ありがとうございます」
    ぶっきらぼうにお礼を言うと、彼は
    「こちらこそ」
    と笑顔を浮かべる。
    彼はそのまま窓辺に留まったままだ。正直どこかへ行って欲しいけど、借り物をしている立場の左近が言える立場ではない。
    ハンカチから少しだけ顔を浮かせ彼を見ると、彼は虚空を見つめている。左近の方には全く視線を向けない。
    変な人。
    だが、無理に慰めたりしない距離感が少し心地よい気もした。

    ようやく涙がおさまり、左近はハンカチの持ち主に声をかける。
    「あの、ハンカチありがとうございました。新しいもの買って返すので…」
    ので、なんだ。連絡先を教えてくださいって言うのもなぁ。全然不自然ではないけれど、自分から男子の連絡先を聞くのは少し抵抗がある。しかも失恋直後に。
    「構わない、気にしないで」
    ハンカチは返さなくていいという意味だろうが、それではあまりにも無礼だ。
    「いえ、そんなわけには」
    などとやり取りしていると、彼はハッとした顔になる。どうしたのか、と首を傾げると
    「失礼」
    彼はそう言って剣道着のまま窓枠をひらりと飛び越え、左近の隣に座る。
    そして、左近を抱き寄せた。
    え、何。どういうこと?
    左近が動揺していると、足音が近づいてくる。抱き寄せられた肩越しに覗くと、先ほど恋が成就したばかりの想い人が恋人と手を繋ぎ楽しそうに歩いてくる。
    先ほど止まったばかりの涙がまたじわりと滲む。

    どうか、気が付かずそのまま立ち去って欲しい。

    そう願うのに、左近の祈りは全く通じず
    「あれ、左近?」
    と声をかけられる。
    声をかけられては反応しないわけにはいかない。のろのろと顔をあげようとすると、力強い腕が引き留める。
    「悪いけど、今取り込み中なんだ」
    堂々とそんなことを言うから、左近は激しく動揺する。
    「え、彼氏いたの!?」
    その声に、違うから!と声を上げようとするが、暑い胸板に阻まれる。
    「他校だからなかなか会えなくて」
    だから、遠慮してくれないか。言外の言葉に、想い人はそそくさと退散する。
    彼らの背中が見えなくなった後、左近は解放される。
    「何してるんですか!」
    左近の顔はこれ以上にないくらいの茹で蛸状態で、今にも倒れてしまいそうだ。
    「す、すまない。何とか誤魔化そうと思って…。でも!恋人とは言ってないわけだし」
    「言ってるも同然です!」
    ああ、もう!と頭を抱える左近に、隣の彼は、すまない、とおろおろ。
    本来であればきりりとしているだろう眉毛をハの字にへにょりと下げ、謝罪の言葉を繰り返す彼に、左近も若干の罪悪感を覚える。
    元はと言えば左近が巻き込んで、彼は左近のために行動してくれたのだ。泣いている左近に優しくもしてくれた。
    「いや、元はと言えば僕が巻き込んだので…こちらこそすみません」
    「いや、私こそ」
    「彼には、うまく言っておきますので」
    そう言うと、左近の頭の中で想い人が喋り出す。

    お前にも彼氏いたんだな!言えよ!
    俺も彼女できたし、ダブルデートしようぜ!彼女紹介したいし、親友の彼氏のことも知りたいしさ。

    うまく言う?どうやって?
    明るい彼のことだから、きっと仲良くなりたいって言うし、付き合ってないって言えばどうして嘘をついたのかを話す必要がある。左近の想いがバレてしまう。
    かたまってしまった左近の肩を自称彼氏が軽く叩く。
    「連絡先、教えてくれないかな。乗りかかった船だし、私が力になれることがあれば何でもするから」
    真剣な眼差しで見つめられ、左近は思わず頷いてしまう。
    「ありがとう」
    スマホを取り出し、連絡先を交換する。
    「高坂陣内左衛門、さん」
    表示した名前を読み上げると、自称彼氏もとい高坂さんは
    「高坂でいいよ」
    と微笑む。
    「川西左近さん」
    「左近でいいです」
    「じゃあ、左近さん」
    左近さん、なんて丁寧な呼び方はされたことがないから、ちょっとそわそわしてしまう。
    「私はタソガレ大の二年生で、大川学園には部活でちょくちょくお邪魔しているんだ。だから、また」
    高坂はそう言って立ち上がる。
    「大川学園二年です。保健委員なので放課後は基本保健室にいます」
    立ち上がり去ろうとする高坂の背中に慌てて投げかける。
    「じゃあ、今度大川学園に来る時は保健室に遊びにいくね」
    そう言って振り返る笑顔に、胸がどきりと跳ねる。
    「部外者は立ち入り禁止です!」
    左近がそう言うと、高坂は手厳しいなと笑う。
    「また連絡するね」
    高坂は左近の頭を軽く撫でて今度こそ去って行く。

    「連絡って、何の?」
    高坂の背中が見えなくなってから左近はぽそりと呟く。
    頭に触れると、高坂に撫でられた部分が若干暑い気がする。
    気のせいだ!絶対に!
    左近は頭を振って気持ちを切り替える。
    「あ、ハンカチどうしよう」
    借りっぱなしで、返却についても決まっていないハンカチが手の中にまだある。綺麗にアイロンがかかっていたハンカチは、くしゃくしゃになってしまった。
    「ハンカチ、どうするか決めないと」
    連絡先あるし、お礼しないとだし。
    自分に言い聞かせるように呟く。

    別に、連絡してみたいとか、もっと話してみたいとか、そんな気持ちでは絶対にない。
    あくまでもお礼のためだ。

    帰路に着く足取りが若干軽いのも、きっと気のせいだ。
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