憧れと欲張り 続 部屋のドアが閉まる音がやけに大きく響いた気がしたのは、私の心臓が鳴っているせいだと思う。歩くたびに床板がほんの少し軋む音が、私たちの沈黙を埋めるように続いている。彼に促されるまま腰掛けたベッドは、当たり前だけれど自分が使っているものとは全然違う感触がして、なんだか落ち着かなかった。
「部屋、散らかってて悪い。誰かを呼ぶ予定なかったからさ」
「ううん、大丈夫。私の方こそごめんなさい、こんな急にお家まで来ちゃって……」
「君が謝ることじゃない。連れてきたのは俺だろ」
「……う、ん」
そんな他愛のない話をしている間も、ついさっき聞いた彼の言葉が、頭の中で何度も繰り返されていた。
やっぱり、おかしくないのかな。
2139