My Sweet Honey Bunny - 後朝 -【黒限】 気怠くも快い微睡から、ゆっくりと浮かび上がっていく。
カーテンの向こうの朝まだきの街から物音は一つも聞こえず、夜とのあわいの青い空気に染まって、部屋ごと水底に沈んでいるようだ。
眠りの中でも感じていた規則正しい鼓動と日向の匂い、自分自身のものと錯覚するほどに馴染んだ体温。心ゆくまで情を交わした後に、小黒に抱きこまれて眠った。長い腕の中で静かに体勢を変えて、健やかな寝息の恋人の顔を間近に見つめる。すっきりと細い輪郭の中に配されている唇も鼻も閉ざされている目も、彫り上げたように端正だ。
外見ばかりではない。
430歳も年上の無限を最も身近な存在として過ごしてきたせいか年齢の割に老成したところもあるが、一方で朗らかであり、物腰も柔らかく、心配りも細やかだ。5年前に移り住んだこの街で、妖精にも人間にも瞬く間に多くの知己を得た。
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