果て「いいところ、連れてってやる」
日曜の朝、突然そう言われて、なんの覚悟もないままここまで来てしまった。
「……ねえ、まだ着かないの?」
どれくらい自転車を走らせただろうか。高校生になって僕達に買い与えられたママチャリ六台。僕の二号は青い色。最近は調子が悪くて漕いでいると二、三分に一度、高い音で悲鳴を上げる。今日は悲鳴を何度聞いたかもうわからない。
国道沿いの道路をひたすらに西へ走らせてきた。はじめは高い建物や車がうじゃうじゃだった景色が少しづつ木々の緑や青空が映り込んでいく。
信号待ちの度におそ松へと問いかけても首を捻って
「……そうだな、まだ? かな」
曖昧な言葉だけが返ってきた。
吹いてくる風は汗が滲んだおでこを撫でてくれる。気持ち良さに目を細めた。横を見ると兄も同じように目を細めている。形の良いおでこがちらりと見える。
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