顔 気が付けば、いつも見目について揶揄われてしまう男になったものだ。
この男の顔を初めてじっくりと眺めたのは、記憶の中の床の冷たさを辿る限り、きっと、学園に入ってから初めて迎えた冬のことだろう。
寒さに耐え忍ぶ私を見兼ね、今日は同じ布団に入って寝ようと声をかけてくれたあの日だ。温かいなぁと、にかりと笑んだかと思えば早々に寝息を立てていた、幼い同室の顔が密談の時よりもかなり近くにあった、ような気がする。
此奴の、閉じられた瞼をそれほどの距離で見つめたのはあれが初めてだった。
幼くも男らしい顔つきの割に、睫毛はなかなかの長さで、頬は柔らかいかと思えば、張りがありしっとりと硬かった。(今に比べれば相当柔いものだったが)
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