澄野の彼女(仮)について 同僚の澄野には、ハイスペックな彼女がいる。
そう確信したのは、数ヶ月前のことだった。
バイトの休憩中、澄野がスマホをスクロールしている手元に、ちらりと何かが光った。
右手の薬指に、シルバーのリング。
普段、アクセサリーなんて一切つけない男だったから、余計に目を引いた。
「お前がそういうの付けるの、珍しいな」
「ん?……なにが?」
休憩室のテーブルを挟んで、向かい側から声をかけると、澄野はぱっと顔を上げた。小さく首を傾げているので、「それ」とリングを指差す。
ようやく俺の意図に気づいたらしく、ちらと自分の手元に目を落として、「ああ」と気恥しそうに呟いた。
「もらったんだよ。……折角だし、付けてみようかなって」
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