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    seaside_seasaid

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    seaside_seasaid

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    [うつくしいけもの]
    文の練習に通勤電車でちまちま打ってたやつ
    123が誘拐事件に巻き込まれる話。
    ふんわり肉体改造表現あり。勿論ひふどです。
    すごく途中だけどテキスト機能使ってみたかったので上げます。出来上がるかわからんけど出来上がったら漫画にしたい

    新宿中央病院。カーテン揺らめく白い病室には嗅ぎ慣れた消毒液の匂いが漂っている。

    前にもここで立ち尽くしていたことがある。まさかまたこんなことになってしまうとは…不甲斐ないにも程がある…。

    白いベッドに横たわり、長い睫毛を輝かせ眠る姿はどこかの王子様のようで、不謹慎にも綺麗だと思ってしまう。

    「一二三くん、よく眠っているね。」
    「せ、んせい」

    やわらかいすみれ色が視界を覆う。一緒にチームを組んでくださっている神宮寺寂雷先生。
    “今回の事件”で再び俺たちを救ってくださった仏の様な方だ。もう全く頭をあげられない。

    話の本筋、事件とは俺の同居人兼幼馴染の伊弉冉一二三が1ヶ月間行方不明となっていた事だ。
    三日前、たまたま残業を免れ一二三の出勤前に帰れた俺はシンジュクで5本指に入る絶品夕飯を振る舞われそれはもう一生分の幸せを使い切ってしまったんじゃないかってほど満たされた心と体で出勤するひふみを送り出したのだった。
    同居と言っても、お互い生活リズムが合わなくすれ違う生活を送っていたため一二三が居なくなったと気づいたのは次の日一二三が出勤してこないと連絡してきたホストクラブオーナーからの電話が来てからだ。

    「お、おれが、おれがもっとはやく気づいてやれていれば…っひ、ふみは…」
    「独歩くん、落ち着いて。独歩くんにどうにかできることではなかったんだ。…一二三くんが起きたら支えてあげられるよう今はとにかく悪い癖はしまっておいて欲しい。」

    先生の仰る通りだ。目覚めたとき一番辛いのは一二三だろう。
    しかし落ち着いてなんていられなかった。
    唯一の友人が、俺なんかを親友と言ってくれる奴が、こんな目にあったんだ。

    前回は腕だった。
    服を着れば傷は隠れる。
    でも今回残ったのは…

    豊かな金色の中に揺れる”人間のもの”ではない耳。

    歌舞伎町連続誘拐事件

    シンジュク歌舞伎町で働く20代後半頃の男性を狙った誘拐事件がここ1年間で連続して行われていた。
    誘拐の詳細は不明。被害者は必ず生還しているが何も覚えておらず、頭にはいわゆる”獣耳”が付けられているという共通点から同一の犯人による連続誘拐事件だと推測されている。

    テレビの中のことだと油断していた。
    前にも一二三は危ない目にあったのに。
    一二三と先生があてがえてくれた幸せに浸かりきって怖いことなんて何も無いと思い込んでいた。

    「俺のせいだ…全部俺の…」
    どうして、いつも俺は一二三を守れない…
    「独歩くん…」

    一二三が目覚めたとき、俺はなんて声をかけてやればいいんだろう。そんなことを考えながらくたびれた自分の靴先をただ眺めた。







    「やー、メンゴメンゴメンゴリーヌ!俺っちちょーっち油断しちった!」

    そんな心配をよそに、目覚めた幼馴染はいつものテンションだ。

    「話で聞くよりやべーコレ!めっちゃ動く〜!」
    頭頂部でぴるぴると動く金色の立派な獣耳。
    おふざけなら可愛らしいと思う所だがこれはもう外しようがない。
    事件で付けられたこの耳は被害者の背中の皮膚と頭髪を材料にかなりの精度で作られ、神経まで”完璧”に繋げられている。つまり戻せない。この事件の被害者は一生消えない傷を心と体に受けているのだ。

    「ね、ど?似合ってるっしょ!」

    一二三の笑った顔は好きだ。けど今はとても可愛いだなんて思えない。だって、

    「…取れないんだぞ、それ。これからこんな目にあったってこと、鏡を見るたび思い出すんだぞ…」

    下唇から血の味がする。悔しくて仕方がないよ、精一杯生きているお前が受けていい仕打ちじゃない。俺なら良かったんだ…一二三じゃなくて、俺が…

    「まー、色々メンドーになるかもしんねーけど?取れねーんなら仕方がねえし!俺っち、こんなん着いたからって支障出るような半端な生き方してねーから。だからさ」

    金色が俺をまっすぐ見つめる。

    「自分が代わりになればよかったなんて思わないでよ」

    その存在は闇が深くなればなるほど輝く。
    俺は虫だ。どんなに落ち込んでみようがその光に引き寄せられてしまう。

    「ひふみ…」

    「どーっぽ、こっち来て。俺っちこの1カ月の記憶ねーけどぉ1カ月分のどっぽ補充してーから!ほい!膝!」

    20数年変わらないいたずらっぽい笑顔で言われたら俺は絶対拒否できない。

    ベッドが1.5人分の重さでギ、と鳴り
    ひと月感じられなかった温もりが、左手から心臓へ流れ込む。

    「ひふみ、寂しかった」
    「うん。」
    「もう帰ってこなかったらって怖かった」
    「いっぱい心配してくれたんだ」
    「ひふみぃ」

    俺よりひとまわり大きくて、指紋の一筋まで綺麗な白い手が髪を解かしてくれる。
    いつもなら心地良くて寝てしまうところだが、今はそんな場合じゃない。1秒でも長く多く一二三を感じたい。一二三がいるんだと確認したい…

    「どっぽ、かぁいい」
    上向きの長い睫毛がとろけて甘い。
    思わず一二三の手のひらに頬を擦り付けてしまう。
    艶やかに色づく三日月に引き寄せられて、視界が金色で埋め尽くされる。

    程よく弾力のついた唇からスッと伸びる舌がくすぐって…それだけで立ち上がれなくなってしまう様になってしまう腰は重たくズクズクと一二三を求めてしまう。

    「ふ、ひ、ふ、だめだ、止まんなく、なる」
    「いーじゃん。止まんなくなろ?」
    「お、俺が嫌なんだ…まだ整理ついてなくて…あたまぐちゃぐちゃで…とにかく今は安静にしててくれ…」

    そりゃあもう欲しい。1カ月間ご無沙汰で、無事に帰ってくれるかどうか分からない家族との再会だ。今すぐめちゃくちゃにされたい。
    しかし目の前の家族は訳もわからず身体を弄られたのだ。
    このまま楽しめるか、楽しめるわけがない。

    金色がへたりと水平になった。
    「…むー、じゃあがまんする!そんかわり、落ち着いたらぜーったいいっぱいイチャイチャしよーな!」

    どんな理不尽にも負けず、人を恨まず、前向きに生きているこいつがこんな目にあっていいわけがない。
    しかしどんなに悔やんだって起きてしまった事は戻せない。
    それは音楽が力を持ち、その力を手に入れた今でも変わらない。
    ならやれる事をやるだけだ。

    刺し違えても事件の元凶を見つけ出してやる。

    「勿論だ。覚悟してろ」
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