『ねぇ、さっきちらっと見えちゃったんだけど…みかげっちの携帯にさ……』
絵本の中で、シンデレラは身分違いの王子様と結婚した。
だってそれは結局、そういう運命だったから。
立場の違いなんて関係ない
愛し合う者たちは、結ばれる。
きっとそれが、このおとぎ話の教訓。
でも、それって本当ですか?
私の王子様は、いつか迎えに来てくれるんですか?
『え?!マッチングアプリが入ってた!?』
『ちょ!?声デカいよ!』
「ブフーーーッッ!!」
何の変哲もない昼下がり。眠くてたまらない現国の授業終わり。
私は食堂で、信じられない会話を耳に入れてしまい、喉奥に送り込むはずの水を盛大にリリースした。
ミチルは席を立っていて、ヒカルは持ち前の運動神経でキレイに放射線を描く聖水を交わした。
ゲホゲホとむせる私。ピンクのツンテールを揺らしながら、かわいらしいハンカチを差し出してくれるヒカル。
ありがとう。きっとミチルなら聖水を避けられなかった。ヒカルでよかった。
――いや、私の王子様、あろうことか他の女と結ばれようとしているんですが。