ソファに座るゼノは赤い顔のまま、スタンリーに絡められた指を力強く握りしめ、たった今言われた言葉を反芻しては硬直から解けないでいた。
「ゼノがしたくないならいいんよ」
フッと微笑んだスタンリーの表情からは決して遠慮しているのではなく、本当にゼノのことを思っての発言であることが見受けられた。
『ゼノとセックスがしたい』
直接的な言葉に下手に誤魔化すことも出来ず、ゼノも真正面からスタンリーに向き合うしか選択肢が残されていなかった。
「あー、その、だね」
ここでの沈黙はゼノにとって居心地が悪かった。そんなことを言う人間は誰も居ないけれどどうしてか責められているような気がしてならなかったからだ。
「ン?」
ゼノが返答に困っている間も不満の一つも見せることなく、むしろ緊張を解すように繋いである手を強弱を付けてニギニギと揉むように握ったり上下に軽く揺すったりして優しく見守っている。
6746