凍える夜には カラカラという乾いた音の中、俺はゆっくりと瞼を開けた。寝起きの動かない頭では、何かが故障した音にも聞こえたそれが、常時回り続ける換気扇の音だと気が付くまで時間を要した。
まだ日は昇っていないようで、部屋は暗闇に包まれていた。
堂路桐子――否、沖野司という男を探し続けて半年、ようやく奴を見つけることができた。俺から逃げ回っていたはずのそいつはどういう風の吹き回しなのか、俺に協力を求め、自分のアジトまで教えてきた。それからというもの、俺は沖野が逃げないように見張りながら、奴に一応協力をしている。
沖野がアジトとしている廃工場には、仮眠室が設置されていた。といっても、あまり立派なものではない。簡易的なベッドが一つだけ。あとは、粗大ゴミとして廃棄される前にどうにかこうにか回収した、ボロのソファーベッドというものが一つあるだけだ。
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