走り書き「はい、そこまで」
眼前に現れた二人の青年の姿に男たちは足を止めた。
双子のような二人の姿に警戒を露わにした、少女を連れている男が恐らく主催者だろう。
数人の黒服の男たちに守られるように囲われている。
「だ、誰だ!?」
「僕たち、その子を返して欲しいだけなんだ」
返してくれたら何もしないよ、と人当たりの良い笑みを浮かべ雷蔵が言葉を口にした。
だが、男は聞くつもりは無いと少女にかけられた手錠を力任せに引き寄せた。
手錠が擦れた痛みに小さく呻く声が少女の口から漏れる。
それにぴくりと二人の眉が跳ね上がるが、表情は崩さない。
三流映画の悪役よろしく黒服の男達が雷蔵たちへ向かってくる。
「交渉決裂、だな」
「想定内だったから問題ないよ」
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