夜に滲む「さ、これで全部終わった。明日には届けに行けますよ」
ペンの蓋を閉め、譲介は立ち上がった。リビングのローテーブルは書き物に向かない、と食卓で作業していたのだ。
渡されたメッセージカードの束を、そのテーブルで封筒に入れながら、何気なく一枚を手に取る。時計の針は、まだてっぺんを回っていない。とは言え、あと半時間もすれば日付が変わる頃合いで、仕事帰りの譲介に手間をかけさせてしまった。
「明日は休みだってのに、悪ぃな」
「いえ、僕も久しぶりに先生たちに会いたいし。一緒に出掛けられるだけで嬉しいですから」
「そうか」
年が明ければ正式に主治医になる男は、やわらかい笑みを浮かべた。
「それにしても、おめぇが筆跡似てて良かったぜ。瓢箪のヤロウは全然違ってたからな。外注に出せやしねぇ」
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