風早閃に海で楽しんでもらいたかった(タイトル)「海だ……!」
「うむ、人のいない場所を見繕ったからな。自由に泳げるぞ」
「本当ですか、ありがとうございます!」
嬉しそうに声を弾ませる風早閃に、菊葉黄連は頷いて返す。
喜んだようで何より、と。大きく頷いて、黄連は自分用の浮き輪を用意する。
オーヴァードとして覚醒した彼は。人生を賭していた夢を諦めなければならなくなった。
……それだけではなく、“愚者の黄金”が脚についてしまったのだ。プールや海、修学旅行など、学生のうちに起こる諦めなければならないことも山のようにあるだろう。
それを哀れんだ職員の一人が「慰安として海水浴とかつれてってあげられませんか?」と黄連に持ちかけてきたのだ。
黄連としても、“大人”として、青少年には元気に過ごしてもらいたいものである。手配を始めるのに、そう考える必要はなかった。
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