別れ際、不意に視界が金色で埋め尽くされる。
それが彼女の、ジークリンデの物だと思い至るまでに数秒。
「じゃあ、また後で」
そう言い残した彼女の笑みの意味に気付くのに更に数秒。
頬に確かに触れた一瞬の柔らかさと暖かさの理由に思い至り、みるみるアメリアスの顔は赤くなる。
耳まで真っ赤にした彼は、しばらく口をぱくぱくとさせることしかできなかった。
そして、やっと少しの冷静さを取り戻し、
「な……何をなさってるんですか!?」
既に遠く離れたジークリンデの背中に向かって思わず声を上げた。
彼女が触れた熱を反芻するように頬に手を添える。
「……期待してしまうじゃありませんか」
そう一言だけ呟くとさっきまでの動揺などなかったかのように、彼もまた職務へと戻っていった。
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