目覚め誰もが寝静まったであろう時間に召喚陣のサークルを見つめる少年、藤丸立香は立っていた。
「……明日も戦闘訓練のシミュレーションがあるのでは無かったか」
「アヴェンジャー」
召喚サークルだけが放つ青白い光の中、薄暗い部屋のドアのそばにアヴェンジャーと呼ばれたその男は佇んでいた。彼は上品な靴音を立てながら、振り向いた黒服の少年へと歩を進める。立香の瞳と似た色をした召喚サークルが小さくバチ、と唸る。
「こんな時間に召喚など、いいのか?」
「……どうしても我慢出来なかったんだ。許してよ」
「ハ。それはダ・ヴィンチ女史に言うべき台詞だな」
「それはそうだね」
黒の手袋で覆われていたとしても理解できるしなやかでありながら己の世界を護らんとするその力強い指を、手のひらを、召喚サークルへと伸ばす。
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